最近、鏡を見るたびに生え際やつむじが気になり始めた方も多いのではないでしょうか。
禿げる原因は1つではなく、AGA(男性型脱毛症)や遺伝的要因、ストレス、生活習慣の乱れなど複数の要素が絡み合っています。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、男性の薄毛の大半を占めるAGAは、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)がヘアサイクルを乱すことで発症します。
20代から30代で薄毛の兆候を感じる人も少なくありません。
遺伝との関係では、薄毛に関わる遺伝子座が250以上特定されており、父方だけでなく母方からの影響も受ける可能性があります。
喫煙者は非喫煙者と比較してAGAリスクが1.77倍に上昇するというデータも報告されています。
自分の薄毛がどの原因に該当するのかを把握することが、効果的な対策への第一歩となるでしょう。
はげる原因7つを紹介!
薄毛や抜け毛に悩む人にとって、その原因を正しく理解することが対策の第一歩となります。
はげる原因は1つではなく、遺伝的要因やホルモンバランス、生活習慣など複数の要素が複雑に絡み合っているケースが多いでしょう。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与することが明記されています。
原因を特定することで、自分に合った効果的な対策や治療法を選択できるようになります。
ここでは、医学的エビデンスに基づいた7つの主要な原因について解説していきます。
AGA
AGA(男性型脱毛症)は、男性の薄毛における最も代表的な原因として知られています。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、AGAは毛周期を繰り返す過程で成長期が短縮し、休止期にとどまる毛包が増加することで発症します。
前頭部や頭頂部の毛髪が軟毛化して細く短くなり、最終的には皮表に現れなくなる現象が特徴的でしょう。
岡山大学病院の資料では、脱毛部にDHT(ジヒドロテストステロン)が高濃度で存在し、これがヘアサイクルの成長期を短縮させる原因物質と考えられています。
岩手大学の研究によれば、DHTは毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体に結合し、複合体を形成して下流の標的遺伝子の転写を調節する仕組みが明らかになっています。
AGAの進行を防ぐためには、早期発見と適切な治療介入が重要となります。
ストレス
ストレスと薄毛の関係については、科学的に完全には解明されていない部分があります。
慶應義塾大学病院によると、ストレスだけで脱毛になるという科学的証拠は確立していないとされています。
円形脱毛症に関しては、科研費研究報告書において、ストレスがCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を介して肥満細胞を活性化し、病態形成や増悪に寄与する可能性が示唆されています。
東北大学の情報では、円形脱毛症の主な原因は遺伝的な体質や免疫機能の異常であり、ストレスはきっかけになることがあるという位置づけです。
慢性的なストレスは自律神経やホルモンバランスに影響を与える可能性があるため、日常的なストレス管理を心がけることが賢明でしょう。
遺伝的要因
遺伝はAGA発症において確立された重要な要因の1つです。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、X染色体上に存在する男性ホルモン受容体遺伝子の多型や、常染色体の17q21や20p11に疾患関連遺伝子の存在が報告されています。
海外の研究では、250以上の独立した遺伝子座が重度の薄毛と関連していることが特定されました。
この研究によると、薄毛の分散の約47.3%が常染色体上の一般的な遺伝的変異で説明でき、約4.6%がX染色体上の変異で説明できるとされています。
父方だけでなく母方の家系からも遺伝的影響を受ける可能性があるため、両親双方の家族歴を把握しておくことには意味があります。
遺伝的素因があっても、適切な対策により進行を遅らせることは可能でしょう。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れは、毛髪の健康に間接的な影響を与える可能性があります。
慶應義塾大学病院では、規則正しい生活を心がけ、睡眠不足を避け、鉄や亜鉛など毛髪を作るもととなるミネラルを過不足なく摂取するためにバランスの良い食事を推奨しています。
海外の研究では、鉄欠乏、亜鉛欠乏、ビタミンD欠乏、必須脂肪酸欠乏、ビオチン欠乏、タンパク質の栄養不良が脱毛を引き起こす可能性があると報告されています。
韓国で実施された疫学研究によると、食事や睡眠の習慣と薄毛の重症度には直接的な関連が見られなかったものの、飲酒と喫煙は男性AGA患者の重症度と関連していました。
栄養素の欠乏は頭皮環境にも悪影響を及ぼすケースがあるため、日々の食生活を見直すことが望ましいでしょう。
間違ったヘアケア
不適切なヘアケアが頭皮環境を悪化させる場合がありますが、間違ったヘアケアが直接的にAGAを引き起こすという明確なエビデンスは限定的です。
慶應義塾大学病院では、毎日か1日おきくらいには頭皮も含めてよくシャンプーし、良好な頭皮を保つことを推奨しています。
過度な頭皮マッサージなどは不必要とも述べられており、適度なケアが重要となるでしょう。
洗浄力が強すぎるシャンプーの使用や、逆に洗髪頻度が極端に少ない場合は、頭皮に皮脂や汚れが蓄積し、脂漏性皮膚炎などの頭皮トラブルを引き起こす可能性があります。
ドライヤーの過度な熱や、強い力でのブラッシングも頭皮や毛髪にダメージを与えかねません。
自分の頭皮タイプに合った適切なヘアケア方法を選択することが、健康な頭皮環境の維持につながります。
喫煙
喫煙はAGAのリスク因子として、複数の研究で関連性が報告されています。
海外のメタアナリシス研究では、喫煙者は中等度から重度のAGAを発症するリスクが1.77倍高く、ヘビースモーカーでは約3倍のリスク増加が認められました。
喫煙による影響のメカニズムとしては、血管収縮による毛包への血流減少、DNA損傷、酸化ストレス、慢性炎症と毛包周囲の線維化、男性ホルモンへの影響などが考えられています。
慶應義塾大学病院でも、喫煙やアルコールは適量にとどめることが推奨されています。
韓国の疫学研究においても、飲酒と喫煙が男性AGA患者の重症度と関連していることが確認されました。
薄毛対策を考える場合、禁煙や減煙を検討することには十分な理由があるでしょう。
帽子やヘルメットの長時間着用
帽子やヘルメットの通常使用がAGAを引き起こすという明確なエビデンスは現時点ではほとんどありません。
一時的な圧迫性脱毛症に関する症例報告では、矯正歯科用ヘッドギアを着用した13歳の男児において、装着部位に対応した限局性の脱毛が4週間以内に見られたケースが報告されています。
この症例ではヘッドギアの使用中止後に発毛が再開し、一時的な圧迫性脱毛症と診断されました。
圧迫性脱毛症は稀であり一時的なものとされているため、通常の帽子着用で永続的な薄毛が起こるとは考えにくいでしょう。
むしろ帽子は紫外線から頭皮を保護する利点もあります。
蒸れによる頭皮環境の悪化が気になる場合は、通気性の良い素材を選び、こまめに外して換気することが対策になります。
はげやすい人の特徴は?
薄毛になりやすい人には、いくつかの共通した特徴が見られます。
遺伝的な素因を持つ人はAGAを発症するリスクが高く、韓国の疫学研究では家族歴のある患者ほど進行したタイプの薄毛を示す傾向が報告されています。
生活習慣も重要な要素であり、慶應義塾大学病院では規則正しい生活と栄養バランスの取れた食事の重要性が強調されています。
自分がはげやすい特徴に当てはまるかどうかを確認することで、早期からの予防対策につなげることができるでしょう。
以下では、薄毛になりやすい人に見られる4つの特徴について詳しく解説します。
家族に薄毛の人がいる
家族歴はAGA発症リスクを予測する上で重要な指標となります。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、AGAの発症には遺伝と男性ホルモンが関与することが明記されています。
韓国で実施された疫学研究によると、家族歴のある患者は男女ともにより進行したタイプの薄毛を示す傾向があり、家族歴のある男性患者ではAGAの発症年齢が家族歴のない患者より早いことが報告されています。
父親だけでなく、母方の祖父や叔父など母系の家族歴も参考になるでしょう。
遺伝的素因があることを把握しておけば、早期からの予防的対策や定期的な頭皮チェックを行う動機づけになります。
家族歴があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、生活習慣や適切なケアで進行を遅らせることは可能です。
睡眠不足や偏った食生活など不規則な生活習慣をしている
不規則な生活習慣を続けている人は、毛髪の健康を損なうリスクが高まる可能性があります。
慶應義塾大学病院では、睡眠不足を避け、鉄や亜鉛など毛髪を作るもととなるミネラルを過不足なく摂取するためにバランスの良い食事を推奨しています。
海外の研究レビューでは、脱毛症状を呈する患者に対して、病歴、食事歴、身体検査により栄養素欠乏のリスク因子をスクリーニングすべきとされています。
栄養素の過不足が毛髪に与える影響を以下に整理しました。
- 鉄、亜鉛、ビタミンD、ビオチンの欠乏:脱毛との関連が報告されている
- タンパク質の栄養不良:毛髪の構成成分であるケラチン合成に影響を与える可能性がある
- セレン、ビタミンA、ビタミンEの過剰摂取:逆に脱毛を引き起こすケースがある
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が行われるため、十分な睡眠時間の確保も重要でしょう。
規則正しい生活リズムと栄養バランスの取れた食事を心がけることが、頭皮と毛髪の健康維持に寄与します。
慢性的なストレスを抱えやすい
慢性的なストレスを抱えやすい人は、頭皮環境に影響が出る可能性があります。
ストレスとAGAの直接的な因果関係は科学的に確立されていないものの、慶應義塾大学病院では疲れをためないよう規則正しい生活を心がけることが推奨されています。
円形脱毛症については、科研費研究報告書において、ストレスがCRHを介して肥満細胞を活性化し、病態形成に寄与する可能性が示唆されています。
東北大学の情報によれば、円形脱毛症の主な原因は遺伝的体質や免疫機能の異常であり、ストレスはきっかけになることがあるとされています。
慢性的なストレス状態は自律神経のバランスを乱し、血行不良やホルモンバランスの変化を引き起こすケースがあるでしょう。
ストレス解消法を見つけ、心身のバランスを保つことが健康な毛髪の維持にも有効と考えられます。
喫煙や過度な飲酒の習慣がある
喫煙や過度な飲酒の習慣がある人は、AGAの進行リスクが高まる可能性があります。
海外のメタアナリシス研究では、喫煙者は非喫煙者と比較して中等度から重度のAGAリスクが1.77倍に上昇し、ヘビースモーカーでは約3倍のリスク増加が報告されています。
喫煙は毛包への血流を減少させ、酸化ストレスを増加させるメカニズムが考えられているでしょう。
韓国の疫学研究においても、飲酒と喫煙が男性AGA患者の重症度と関連していることが確認されました。
慶應義塾大学病院でも、喫煙とアルコールは適量にとどめることが推奨されています。
薄毛予防の観点からも、禁煙や節酒を心がけることは頭皮環境の改善に寄与する可能性があります。
はげる原因への対策方法!治療法も紹介
薄毛対策には、日常生活で実践できるセルフケアから医療機関での専門的な治療まで、さまざまな選択肢があります。
慶應義塾大学病院では、規則正しい生活、バランスの良い食事、適切な頭皮ケアが基本的な対策として推奨されています。
セルフケアだけでは効果が不十分な場合、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度Aとされているフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジル外用などの医学的治療が選択肢となるでしょう。
原因や進行度に応じた適切な対策を選ぶことが、効果的な薄毛改善への近道です。
ここでは、食事や睡眠などの生活習慣改善から専門クリニックでの治療まで、具体的な対策方法を紹介します。
髪の毛にいい食べ物を食べる
バランスの取れた食事は、健康な毛髪を維持するための基盤となります。
慶應義塾大学病院では、鉄や亜鉛など毛髪を作るもととなるミネラルを過不足なく摂取するために、バランスの良い食事を推奨しています。
海外の研究レビューによると、ビタミンB群、ビタミンD、鉄、亜鉛は毛髪の成長と維持において重要な役割を果たし、これらの微量栄養素の欠乏は脱毛と関連しているとされています。
毛髪の健康に関わる栄養素の特徴を以下に整理しました。
- 亜鉛:毛髪のタンパク質合成に関与し、牡蠣、牛肉、ナッツ類に多く含まれる
- 鉄:毛母細胞への酸素供給に必要で、レバー、赤身肉、ほうれん草などに含まれる
- ビタミンD:毛包の発達に関与し、魚類、卵黄、きのこ類から摂取できる
- ビオチン:ケラチン生成をサポートし、卵、大豆製品、ナッツ類に含まれる
- タンパク質:毛髪の主成分であるケラチンの原料となる
セレン、ビタミンA、ビタミンEの過剰摂取は逆に脱毛と関連する可能性が報告されているため注意が必要です。
サプリメントに頼りすぎず、日常の食事から多様な栄養素を摂取することが望ましいでしょう。
質の高い睡眠と適度な運動習慣で頭皮の血行促進とストレス解消をする
睡眠と運動は、全身の健康維持を通じて頭皮環境にも良い影響を与える可能性があります。
慶應義塾大学病院では、規則正しい生活を心がけ、睡眠不足を避けることが推奨されています。
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われるため、毛母細胞の活動にも関わると考えられるでしょう。
ただし、睡眠や運動が直接的に発毛を促進するという大規模な臨床研究は現時点では限定的です。
適度な運動は血流を改善し、頭皮への栄養供給を促進する効果が期待できます。
運動にはストレス解消効果もあり、自律神経のバランスを整える助けになるケースがあるため、7〜8時間の睡眠確保と定期的な運動習慣を心がけることが有効でしょう。
低刺激なシャンプーで頭皮環境を整える
頭皮を清潔に保つことは、健康な毛髪を育てるための基本条件となります。
慶應義塾大学病院では、毎日か1日おきくらいには頭皮も含めてよくシャンプーし、良好な頭皮を保つことが推奨されています。
洗浄力が強すぎるシャンプーは必要な皮脂まで取り除き、頭皮の乾燥やバリア機能の低下を招く可能性があるでしょう。
アミノ酸系やベタイン系など、低刺激な洗浄成分を配合したシャンプーを選択することが頭皮への負担軽減につながります。
シャンプー時は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないよう十分に流すことが大切です。
自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選び、適切な頻度で洗髪することで頭皮環境の改善が期待できます。
頭皮マッサージで毛髪の太さを増加させる
適度な頭皮マッサージは、毛髪の太さを増加させる可能性があることが研究で示されています。
海外の研究によると、標準化された頭皮マッサージを24週間継続した結果、毛髪の太さが0.085mmから0.092mmに増加したことが報告されています。
このメカニズムとして、頭皮マッサージによる機械的刺激が毛包内の毛乳頭細胞に伝わり、発毛促進遺伝子の発現を上昇させ、脱毛関連サイトカインの発現を抑制する可能性が示唆されています。
慶應義塾大学病院では、過度な頭皮マッサージは不必要とされているため、力加減には注意が必要でしょう。
マッサージは発毛本数の増加や成長速度への効果は確認されていないものの、毛髪を太くする効果が期待できるため、適度な力で継続することが推奨されます。
セルフケアで効果を感じない場合はAGAクリニックでの治療をする
セルフケアで十分な効果が得られない場合は、専門医療機関での治療が選択肢となります。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、エビデンスに基づいた治療法が推奨度別に分類されています。
主なAGA治療法と皮膚科外来の対応を比較した結果は以下のとおりです。
なお、以下は一般的な傾向であり、施設によって異なる場合があります。
一般皮膚科でも専門的なAGA治療を提供している施設も存在します。
| 比較項目 | AGAクリニック | 一般皮膚科 |
|---|---|---|
| AGA専門治療 | フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル外用など推奨度Aの治療を提供 | 基本的な外用薬処方が中心となる場合が多い |
| 診療体制 | AGA専門医が在籍し、薄毛治療に特化した診療を実施 | 皮膚疾患全般を扱うため、AGAに割ける時間が限られる傾向がある |
| 治療の選択肢 | 内服薬、外用薬、注入療法、植毛など幅広い選択肢を用意 | 外用薬中心で、選択肢が限定される傾向がある |
| 経過観察 | 定期的な頭皮チェックや写真撮影で進行度を可視化 | 一般的な経過観察にとどまることが多い |
| 費用 | 自由診療のため費用は高めだが、治療効果を重視した処方が可能 | 保険適用外のため、AGAクリニックと大差ない場合もある |
フィナステリド内服、デュタステリド内服、ミノキシジル外用は推奨度Aとして強く推奨されており、これらの治療は男性AGAに対して高いエビデンスがあります。
ミノキシジル内服については推奨度Dとされ、現時点では推奨されていない点には注意が必要でしょう。
AGAは進行性の症状であるため、早期に専門クリニックを受診し、自分に合った治療法を選択することが効果的な改善につながります。

