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甲状腺の異常による髪の抜け方の特徴|薄毛・抜け毛は治るのかを専門知識で解説

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甲状腺 髪の抜け方に悩む方の多くは、30〜50代の女性です。

男性より5〜8倍発症しやすく、患者の半数以上に毛髪への影響が生じます。

甲状腺ホルモンの乱れはヘアサイクルの成長期を短縮させ、1日100本以上の脱毛が続くことも。

疾患ごとに甲状腺 髪の抜け方のパターンは異なります。

橋本病では全体的なボリューム低下、バセドウ病では眉毛の外側が薄くなる変化が典型的。

TSH値の血液検査で甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症の確認が可能です。

治療を開始すれば6〜12か月での発毛回復が期待できます。

目次

甲状腺が原因の髪の抜け方には全体的に薄くなる特徴がある

甲状腺の異常による脱毛は、特定の部位だけが薄くなるのではなく、頭部全体から均一に髪が抜ける点に最大の特徴があります。

AGAのように生え際が後退したり頭頂部だけが目立ったりする脱毛パターンとは明確に異なり、全体的なボリュームダウンとして現れます。

甲状腺ホルモンは毛包内の代謝と細胞増殖を広範に調節しているため、その異常はどの部位の毛包にも等しく影響を及ぼします。

鏡を見たとき、どこか1か所ではなく全体的に髪が薄くなったと感じる方は、甲状腺疾患を念頭に置いた検査を受けることが重要です。

抜け毛の特徴をほかの脱毛症と正確に区別することが、適切な治療への第一歩といえます。

甲状腺の抜け毛の特徴はびまん性脱毛で頭部全体のボリュームが減少する

甲状腺疾患による脱毛の最も典型的なパターンは「びまん性脱毛」と呼ばれ、頭部全体のボリュームが均一に減少する形で進行します。

これは甲状腺ホルモンが毛包の成長期(アナゲン)の維持と休止期(テロゲン)の期間の調節に直接関わっているためであり、ホルモンバランスが乱れると全体の毛包が一斉に影響を受けます。

「THs promote the initiation and maintenance of the anagen phase by stimulating cell proliferation and metabolic activity within the HFs.(甲状腺ホルモンは毛包内での細胞増殖・代謝活性を刺激し、成長期の開始と維持を促進する)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMID 37692605

AGAや脂漏性脱毛症は分け目や頭頂部に集中して進行しますが、甲状腺性のびまん性脱毛は頭皮全体から毛髪密度が低下します。

甲状腺機能低下症と亢進症では脱毛の質感や髪質に差異があるものの、びまん性のパターンという点は共通しています。

日常的にブラシに残る毛の量が増え、入浴時にシャワーの排水溝に抜け毛が目立つようになった場合は、甲状腺ホルモン値の確認が賢明です。

全体的なボリュームダウンは気づきにくいため早期受診が脱毛の悪化を防ぐ上で重要な意味を持ちます。

甲状腺機能低下症の抜け方は髪がパサパサで乾燥しやすい

甲状腺機能低下症では、ホルモン不足によって代謝が全身的に低下し、毛髪の成長が遅くなるとともに乾燥して脆い質感に変化します。

皮脂腺の分泌も抑制されるため、頭皮と髪の水分バランスが崩れ、パサパサした見た目と手触りになります。

「Hypothyroidism causes slow-growing, coarse, dry, brittle hair.(甲状腺機能低下症では、毛髪の成長が遅くなり、粗く・乾燥し・脆くなる)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMID 37692605

また、慶應義塾大学病院のKOMPASは「毛が抜ける、肌が乾燥しやすい」を甲状腺機能低下症の特徴的な症状として明記しており、髪のパサつきは全身の乾燥傾向と並行して起こります。

「皮膚は乾燥し、ざらざらで、やや黄みを帯びます。脱毛も起き、頭髪はまばらに、眉も外側が薄くなります。」

引用元:JCHO大阪病院コラム「甲状腺機能低下症の初期サイン」

J-STAGE掲載の日本内科学会誌でも「皮膚乾燥(肌荒れ)、脱毛、体重増加、月経過多」が甲状腺機能低下症の自覚症状として列挙されており、髪の乾燥と脱毛が密接に関連します。

「自覚症状として…皮膚乾燥(肌荒れ),脱毛…他覚的には…脱毛があり,眉毛も外側1/3が薄い」

引用元:J-STAGE 日本内科学会雑誌 97巻9号

髪のパサつきや切れ毛が急に増えた方は、単なるヘアダメージとして見過ごさず甲状腺機能低下症の可能性を考慮する必要があります。

乾燥した脆い毛髪が特徴的なサインとなる場合があります。

甲状腺機能亢進症の抜け方は細く柔らかい髪の毛が抜ける

甲状腺機能亢進症では、ホルモンが過剰に分泌されることで毛髪の代謝回転が速くなりすぎ、十分に太く成長する前に毛が抜け落ちる状態が生じます。

その結果、抜ける毛は細く・絹のように柔らかいことが特徴です。

「Thyrotoxicosis causes fine, silky hair. Diffuse non-scarring alopecia is also possible… Surprisingly, even in cases of an overactive thyroid, hair shedding can occur, and the tensile strength of the hair shafts is reduced.(甲状腺中毒症では細く絹のように柔らかい毛になる。びまん性脱毛も起こり得、毛幹の引っ張り強度も低下する)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440

慶應義塾大学病院KOMPASのバセドウ病ページでも「手の指が小刻みに震える、毛が抜けやすいといった症状も見受けられます」と記載されており、亢進症による脱毛は動悸・体重減少などの全身症状と同時に出現します。

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能亢進症・バセドウ病」

低下症では乾燥・硬化した毛が抜けるのに対し、亢進症では柔らかくハリのない毛が抜けるという違いがあり、この髪質の差が疾患タイプを推測する手がかりになり得ます。

髪質の急激な変化を自覚した場合は、どちらの方向へ変化したかを医師に伝えると診断の助けになる可能性があります。

甲状腺の薄毛を画像で確認するとAGAや円形脱毛症との違いがわかる

甲状腺による薄毛の画像的な特徴を把握しておくと、AGA(男性型・女性型脱毛症)や円形脱毛症との鑑別において重要な判断材料になります。

AGAは軟毛化(産毛化)を伴いながら特定部位から後退しますが、甲状腺疾患由来のびまん性脱毛は軟毛化を伴わずに頭部全域が疎毛となります。

「半年以上かけて進行し,軟毛化を伴わない頭部全域に及ぶ疎毛の場合,慢性休止期脱毛を考える.原因として甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,鉄欠乏性貧血…」

引用元:J-STAGE 順天堂醫事雑誌「髪の健康を考える」59巻4号

ダーモスコピーによる鑑別研究では、甲状腺機能低下症の患者では毛幹の異常や産毛の増加が正常群と有意に異なることが確認されています。

「The frequency of hair shaft abnormalities and vellus hair significantly differed between the two groups(甲状腺機能低下症 vs 正常)」

引用元:Dermoscopic Findings of Alopecia in Patients with Hypothyroidism – PMID 36714186

円形脱毛症は円形または楕円形の境界明瞭な脱毛斑が生じる点で甲状腺性のびまん性脱毛とは視覚的に大きく異なります。

専門機関での頭皮診断や画像比較を活用し、自己判断せず医師の診察を受けることが正確な診断への近道です。

薄毛の形や範囲を医師に正確に伝えることで、原因を絞り込む上で有益な情報となります。

眉毛の外側が薄くなる脱毛は甲状腺機能低下症に特徴的なサインである

甲状腺機能低下症では、頭髪だけでなく眉毛の外側1/3が薄くなる症状が出ることが知られており、「ヘルトーゲサイン(クイーン・アンサイン)」と呼ばれる古典的な臨床徴候です。

これは甲状腺ホルモンの不足が毛包全体に広く影響を及ぼすことを示す重要なサインです。

「Hypothyroidism can present with loss of the lateral third of the eyebrow, which is a classic, but nonspecific sign of hypothyroidism.(甲状腺機能低下症では眉毛外側1/3の脱落が見られる。古典的だが非特異的なサイン)」

引用元:Eyebrow and Eyelash Alopecia: A Clinical Review – PMC9870835

JCHO大阪病院のコラムでも「眉も外側が薄くなります」と明記されており、日本の医療現場でも確認されている所見です。

引用元:JCHO大阪病院コラム

また、甲状腺機能低下症の13歳の症例を報告した英文論文でも、眉毛外側1/3の脱毛が観察されており、年齢を問わず出現し得るサインとして認識されています。

「Hair loss was noted in the lateral one-third of the eyebrows as well.」

引用元:Levothyroxine Therapy’s Transformative Impact on Hair Loss – PMID 39928016

頭髪の薄毛とともに眉毛の外側が抜け始めた場合は、甲状腺機能低下症を疑う有力な根拠になります。

眉毛の変化は見落とされやすいため、定期的に自身の眉の濃さを確認する習慣が早期発見につながる場合があります。

甲状腺の抜け毛は治る?治療でホルモンを正常化すれば改善が期待できる

甲状腺の異常による抜け毛は、多くの場合、根本原因である甲状腺ホルモンの異常を治療で正常化することで改善が期待できます。

ただし、頭皮ケアや育毛剤を単独で使用しても根本的な解決にはならず、甲状腺疾患そのものへのアプローチが不可欠です。

ホルモン値が安定した後も毛周期(ヘアサイクル)の回復には一定の時間が必要であり、すぐに髪が戻るわけではないことを理解しておくことが重要です。

回復の速度には個人差が大きく、毛包が長期間萎縮していた場合は回復が難しいケースも存在します。

抜け毛が治るかどうかの見通しを立てるためにも、早期に専門医を受診して治療を開始することが最善の対応です。

甲状腺機能低下症の薄毛はホルモン補充治療の開始で抜け毛が治ることが多い

甲状腺機能低下症による薄毛は、ホルモン補充療法(レボチロキシンの内服)を開始することで、多くの場合は脱毛の進行が止まり、髪の回復が期待できます。

ホルモン値が正常化されることで毛包の代謝活性が回復し、休止期に留まっていた毛髪が成長期へ移行し始めます。

「replacement medication often halts hair loss, except in cases of long-term atrophic hair follicles associated with hypothyroidism.(補充療法薬は脱毛を止めることが多い。ただし長期萎縮毛包の場合は例外となる)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440

治療薬であるレボチロキシンは副作用が少なく安定した薬剤として評価されており、1日1回の内服でホルモン値を維持できます。

「甲状腺機能低下症の治療は合成甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン)の内服です。この薬は副作用もほとんどない安定した薬で、血中半減期が7日ほどあり、1日1回の内服で十分です。」

引用元:JCHO大阪病院コラム(PDF)

ホルモン補充によって代謝が回復すると、毛髪の乾燥やパサつきも徐々に改善する可能性があります。

脱毛の進行が止まり、新しい毛が生え始めるまでには一定の期間が必要なため、治療開始後も焦らず継続することが回復への道筋となります。

橋本病の抜け毛が治るまでの期間は数か月〜1年程度が目安

橋本病による甲状腺機能低下症で脱毛が生じた場合、レボチロキシン投与によってTSH値が正常範囲に回復しても、髪の改善が始まるまでには追加の期間が必要なことがあります。

信州内分泌談話会の臨床報告では、TSH正常化後10か月が経過した時点ではじめて全部位での発毛が確認されたとされています。

「レボサイロキシン開始となり,2カ月後 TSH は正常範囲に回復した。しかし,脱毛の改善は見られず…TSH 正常化10カ月後までは発毛を認めなかったが,その後全ての部位で発毛を認めた。…橋本病による甲状腺機能低下症に全身脱毛を合併しホルモン補充療法により回復した症例と考えた。」

引用元:第28回 信州内分泌談話会 抄録(PDF)

一方、13歳の甲状腺機能低下症患者にレボチロキシンを投与した症例では、開始後わずか2か月で著明な毛髪改善が確認されており、回復の速度は個人の状態によって大きく異なります。

「Two months later, during the follow-up visit, there was substantial improvement in hair growth as well.(2か月後の診察時に著明な毛髪改善が確認された)」

引用元:Levothyroxine Therapy’s Transformative Impact on Hair Loss – PMID 39928016

血液検査の数値が改善してから実際の髪質の変化や抜け毛の減少を実感するまで、通常3か月から半年、場合によっては1年程度かかるとされており、治療の継続と定期的な検査が欠かせません。

期間中に焦って治療を中断すると回復が滞る可能性があります。

橋本病の抜け毛についてブログや体験談で語られる回復の経過

橋本病による脱毛の体験談をブログや患者コミュニティで確認すると、「治療を始めてから半年間は変化を感じられず不安だった」「1年近く経ってから急に髪のボリュームが戻った」という声が多く見受けられます。

治療開始直後は脱毛が継続したり、一時的に増加したりするケースも報告されており、これは乱れたヘアサイクルが正常化する過程での移行期反応である可能性があります。

回復の経過に関するブログの体験談を以下に整理しました。

  • 治療開始後2〜3か月はホルモン値が改善しても抜け毛が続くケースが多い
  • 半年を過ぎた頃から毛のハリやコシが少しずつ戻ったと感じる体験談が目立つ
  • 1年以上経過してから顕著なボリューム回復を実感したという報告も少なくない
  • ヘアケアや食事管理を治療と並行して行ったことが回復を後押ししたという意見もある

個人差が大きく、すべての方が同じ経過をたどるわけではないことに注意が必要です。

体験談はあくまで参考情報であり、回復のペースを医師と共有しながら治療を継続することが回復の鍵となります。

バセドウ病の抜け毛はいつまで続く?治療後の回復期間と経過を解説

バセドウ病による脱毛は、抗甲状腺薬(メルカゾールなど)でホルモン分泌を正常化することで改善に向かいますが、ホルモン値が安定してから乱れたヘアサイクルが整うまでには通常3か月から半年以上の期間を要します。

バセドウ病治療では少なくとも発症から1〜2年以上の服薬継続が必要なケースが多く、その間に脱毛も徐々に改善していく経過をたどります。

「甲状腺ホルモンの安定化を目指す治療によりホルモンバランスが整うと、乱れていた毛周期も徐々に正常化に向かいます。ただし、ホルモン値が安定してから髪の状態が改善するまでには、毛周期の関係で数か月から半年程度の時間がかかるのが一般的です。」

引用元:AGAメディカルケアクリニック「内分泌疾患による脱毛症状」

生命維持に重要な臓器へ優先的にエネルギーが供給されるため、末端に位置する髪の毛への栄養回復は後回しになる傾向があります。

治療中に「抜け毛がいつまで続くのか」という不安を抱く方は少なくありませんが、ホルモン値の安定とともに脱毛は自然と落ち着いていくと考えられます。

治療と並行して頭皮環境を整えるケアを行うことが、回復を促す上で意味のある選択です。

バセドウ病の脱毛については、ホルモン値が落ち着いてから半年以上の経過を見守ることが現実的な目安となります。

バセドウ病の抜け毛に関するブログや知恵袋での体験談の傾向

バセドウ病患者の抜け毛に関するブログや知恵袋などの口コミを調べると、「メルカゾールを飲み始めてしばらくは抜け毛がひどかった」「ホルモン値が落ち着いてから3か月で抜け毛が減った」など、治療経過と抜け毛の変化が密接に連動しているという体験談が多く見られます。

抜け毛に関する体験談の傾向を以下にまとめました。

  • 治療開始から半年以内に抜け毛が落ち着いたという体験談が多い一方、1年以上続いたという声もある
  • ホルモン値の改善より先に抜け毛が止まったと感じるケースも報告されている
  • 薬の用量変更のタイミングで一時的に抜け毛が再び増えたという体験談もある
  • 知恵袋では「同じ症状の方と情報共有できた」と精神的なサポートとして活用している声もある

体験談はあくまで個人の経験であり医学的根拠とは異なりますが、治療の見通しを理解する上での参考になります。

必ず主治医に自身の状態を定期的に相談しながら治療を続けることが最善の対応です。

メルカゾール服用中の抜け毛は薬の副作用の可能性もある

バセドウ病の治療に用いられるメルカゾール(チアマゾール)は、甲状腺ホルモンの産生を抑制する抗甲状腺薬ですが、服用中に抜け毛が生じる場合は病気そのものの影響に加え、薬の副作用として脱毛が起こる可能性があります。

PMDAの副作用症例データベースでは、チアマゾール・メルカゾールの被疑薬として「脱毛症」が報告されており、副作用としての脱毛事例が自発報告から確認されています。

引用元:副作用症例一覧 – PMDA(go.jp)

長期メチマゾール(メルカゾールの有効成分)投与に関する欧州内分泌学会誌の研究でも、バセドウ病治療中の副作用反応の頻度と特性が報告されており、脱毛を含む皮膚系反応が確認されています。

引用元:Long-term methimazole therapy in Graves’ hyperthyroidism – PMC9175582

メルカゾール服用中に脱毛の増加を自覚した場合は、バセドウ病由来の脱毛か薬の副作用によるものかを自己判断することは難しいため、必ず医師に報告して対応を相談することが適切です。

場合によっては薬の種類の変更や用量調整が検討される場合があります。

甲状腺の抜け毛が改善できない場合は毛包の長期萎縮が原因の可能性がある

甲状腺疾患の治療を行い、ホルモン値が正常化された後も脱毛の改善が見られないケースでは、毛包が長期にわたって萎縮し、再生能力が低下している可能性があります。

甲状腺機能低下症を長期間放置した場合、毛包内の幹細胞や毛乳頭細胞が機能不全に陥り、治療後も発毛が起こりにくい状態になることがあります。

「replacement medication often halts hair loss, except in cases of long-term atrophic hair follicles associated with hypothyroidism.(補充療法薬は脱毛を止めることが多いが、甲状腺機能低下症に関連した長期萎縮毛包の場合は例外となる)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440

毛包の萎縮が進行しているかどうかは、頭皮の専門的な検査(ダーモスコピーなど)によって判断できる場合があります。

このような場合は、甲状腺治療と並行して発毛専門クリニックでの頭皮・毛包評価を受け、追加の発毛ケアを検討することが現実的な対応です。

甲状腺疾患を早期に発見して治療を開始することが、毛包の長期萎縮を防ぐ上で最も有効な手段といえます。

甲状腺ホルモンの異常が髪の毛の成長サイクルに影響する原因とは

甲状腺ホルモンが髪の成長サイクル(ヘアサイクル)に直接関わっているという事実は、分子生物学的な研究によって裏付けられています。

毛髪は成長期・退行期・休止期というサイクルを繰り返しており、甲状腺ホルモンはこのサイクルの各段階を調節する役割を担っています。

ホルモン値が乱れると、成長期が短縮されるか、休止期が過度に延長されるかのいずれかが生じ、どちらの方向でも脱毛の増加につながります。

このメカニズムを理解することは、なぜ甲状腺疾患で抜け毛が起きるのかを論理的に把握する上で欠かせない視点です。

原因を正確に知ることが、適切な治療選択への基盤となります。

甲状腺ホルモンはヘアサイクルの成長期を維持し毛髪の代謝を調節している

甲状腺ホルモン(T3・T4)は毛包(ヘアフォリクル)内の細胞増殖と代謝活性を直接刺激することで、毛髪の成長期(アナゲン)の開始と維持を促進します。

また、休止期(テロゲン)から成長期への移行タイミングも甲状腺ホルモンが調節しており、その作用は毛包全体の機能維持に深く関わっています。

「THs promote the initiation and maintenance of the anagen phase by stimulating cell proliferation and metabolic activity within the HFs. They increase the rate of hair growth and contribute to the production of new hair fibers.(甲状腺ホルモンは毛包内での細胞増殖・代謝活性を刺激し、成長期の開始と維持を促進する)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440

毛幹のケラチン産生にも甲状腺ホルモンは関与しており、ホルモンが不足するとケラチンの産生が低下して毛髪が脆くなります。

この生物学的な関連性は、甲状腺疾患が必然的に毛髪の変化をもたらす理由を明快に説明しています。

甲状腺ホルモンの正常な機能が健康な毛髪を保つ前提条件となります。

甲状腺ホルモンが不足すると休止期脱毛が進行する仕組み

甲状腺ホルモンが不足すると、毛包内の細胞分裂が抑制され、成長期(アナゲン)にある毛髪が休止期(テロゲン)に早期移行します。

休止期の毛の数が増えると、その後の抜け毛の量が増加し、「テロゲン・エフルビウム(休止期脱毛)」と呼ばれる状態が引き起こされます。

「Hypothyroidism has been linked to a disruption in the hair growth cycle by inhibiting cell division in the epidermis and skin appendages, resulting in an increased number of hairs in the resting phase. The prolonged telogen phase eventually results in excessive shedding of resting hair.(甲状腺機能低下症は表皮・皮膚付属器での細胞分裂を抑制し、休止期の毛髪数が増加。延長した休止期が休止期脱毛の原因となる)」

引用元:Is thyroid dysfunction a common cause of telogen effluvium? – PMC10766245

休止期脱毛は一度に大量の毛が抜けることで気づかれやすく、甲状腺機能低下症の初期サインとして現れることもあります。

全体的な毛量の減少に気づいたタイミングで甲状腺機能の検査を受けることが早期治療につながる可能性があります。

甲状腺ホルモンが過剰だと成長期が短縮し細い毛が増加する

甲状腺ホルモンが過剰になると毛母ケラチノサイトの増殖が過度に促進されるとともに、成長期の調節機構が乱れ、十分な毛径に達する前に毛が抜け落ちるサイクルに入る可能性があります。

「T4 up-regulates the proliferation of hair matrix keratinocytes. T4 also prolongs the duration of the hair growth phase (anagen) in vitro, possibly due to the down-regulation of TGF-beta2, the key anagen-inhibitory growth factor.(T4は毛母ケラチノサイトの増殖を上方制御し、成長期の期間を延長する作用を持つ。その機序にはTGF-β2の下方制御が関わる)」

引用元:Thyroid hormones directly alter human hair follicle functions – PMID 18728176

さらに分子生物学レベルの研究では、甲状腺ホルモンシグナルが毛包幹細胞のバルジからの動員を制御していることも確認されています。

「Thyroid hormone signaling is an important determinant of the mobilization of stem cells out of their niche in the hair bulge.(甲状腺ホルモンシグナルが毛包幹細胞のバルジからの動員を制御する)」

引用元:Thyroid hormone signaling controls hair follicle stem cell function – PMC4454174

ホルモンが過剰な状態では毛包の機能が高回転になりすぎて細い毛が次々と生まれ落ちる状態になります。

バセドウ病で髪が細くなったと感じる方は、この成長期短縮のメカニズムが関わっている可能性があります。

甲状腺疾患は女性に多く薄毛の悩みが発症しやすい理由は免疫の性差にある

甲状腺疾患は女性に圧倒的に多い疾患であり、橋本病の女性:男性比は18:1に達するという報告があります。

その背景には、免疫機能における性差が大きく関係しています。

「Women are more affected by Hashimoto’s Thyroiditis than men, with a ratio of 18:1.(橋本病は男性より女性に多く、その比率は18:1)」

引用元:An Update on Alopecia and its Association With Thyroid Autoimmune Disease – PMC10769472

「The female predominance is attributed to sex differences in immune function, similar to many autoimmune diseases.(女性優位性は免疫機能の性差による。多くの自己免疫疾患と共通する傾向)」

引用元:Autoimmune Thyroid Disease in Women – PMC10071442

JCHO大阪病院の資料でも「女性が男性の3〜7倍多く、成人女性を血液検査で調べると10〜20%の方が抗甲状腺抗体陽性」と報告されており、自覚症状がなくても甲状腺異常を潜在的に持っている女性が多い可能性があります。

引用元:JCHO大阪病院コラム(PDF)

また、国内研究では「自己免疫性甲状腺疾患は日本人の1/10が発症する頻度の高い疾患」とされており、特に女性の薄毛・抜け毛の背景には甲状腺疾患が潜んでいるケースが少なくないといえます。

女性の薄毛を女性ホルモンの問題やAGAと断定する前に、甲状腺機能の検査を行うことが重要です。

甲状腺機能の異常はストレスや自己免疫の要因で悪化し抜け毛が増える

甲状腺機能の異常はストレスや自己免疫反応の活性化によって悪化するケースがあり、それに伴って抜け毛も増加する可能性があります。

橋本病やバセドウ病はいずれも自己免疫疾患であり、過剰なストレスが免疫系に影響を与えることで病態が悪化する場合があります。

慶應義塾大学病院KOMPASのバセドウ病の項目には「未治療の甲状腺機能亢進症に過度のストレスなどが加わった結果、重い甲状腺機能亢進症となってしまうことがある」と記載されており、ストレスが病態を悪化させる要因として明示されています。

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能亢進症・バセドウ病」

睡眠不足・過労・精神的な負担といった日常的なストレス要因が蓄積すると、甲状腺機能の変動につながり、そのたびに脱毛が悪化するサイクルに入るリスクがあります。

甲状腺疾患の管理においてはホルモン値の調整だけでなく、生活習慣の改善やストレスの軽減も重要な要素として位置づける必要があります。

甲状腺の異常による薄毛は女性・男性ともに全身症状を伴うことが多い

甲状腺の異常による脱毛は孤立した症状ではなく、全身のさまざまな症状と同時に現れることが多く、これが甲状腺疾患を原因と特定する重要な手がかりになります。

倦怠感・むくみ・体重変化・肌の乾燥などの症状が薄毛と重なって出現している場合は、甲状腺疾患を強く疑う根拠となります。

特定の部位の脱毛だけを気にしていると、全身症状のサインを見落としてしまうケースがあります。

甲状腺疾患は女性に多い疾患ですが、男性にも発症し、男女ともに脱毛を含む全身症状を引き起こします。

薄毛の背景に甲状腺疾患が潜んでいないか、全身の状態と合わせて確認することが診断の精度を高める上で有効です。

甲状腺機能低下症は倦怠感・むくみ・体重増加・髪のパサつきが同時に出る

甲状腺機能低下症は代謝全体が低下する疾患であるため、倦怠感・むくみ・体重増加・声のかすれ・便秘・月経異常など、髪のパサつきや脱毛以外にも多岐にわたる症状が同時に現れます。

「疲れやすい、寒さに弱い、むくみがち、体重が増える、声がかすれる、動作が緩慢、肌が乾燥しやすい、毛が抜ける、便秘、生理が不規則…その症状は極めて多岐にわたります」

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能低下症」

「自覚症状として,浮腫(浮腫感),寒がり,易疲労感,嗄れ声,言語のもつれ,動作緩慢,精神鈍麻,眠がり,難聴,皮膚乾燥(肌荒れ),脱毛,体重増加,月経過多などがある」

引用元:J-STAGE 橋本病・バセドウ病「診断と治療」教育講演

厚生労働省の資料でも「むくむ・寒い・太る・かすれ声・どうき・元気がない」が甲状腺機能低下症の特徴として挙げられています。

引用元:厚生労働省「医薬品副作用としての甲状腺機能低下症」(PDF)

全身症状の数が多いほど甲状腺機能低下症の可能性が高まりますが、症状が軽い潜在性甲状腺機能低下症の段階では脱毛のみが先行して現れるケースもあります。

甲状腺機能低下症の髪の毛の変化と全身症状のセルフチェック項目

甲状腺機能低下症の可能性をセルフチェックする際は、髪の変化と全身症状を組み合わせて確認することが重要です。

以下の項目を確認してください。

  • 頭髪全体のボリュームが均一に減った(びまん性脱毛)
  • 髪がパサパサして乾燥・断毛が増えた
  • 眉毛の外側が薄くなってきた
  • 体毛全体が薄くなってきた
  • 以前より寒さを感じやすくなった(寒がり・代謝低下)
  • 体重が増加し、食欲は変わらないかむしろ減った
  • 顔や手足がむくむ感じがある
  • 疲れやすく、以前のような活動量が維持できない
  • 便秘が続いている、または以前より消化が遅くなった
  • 肌が乾燥しやすく、荒れやすくなった

上記のうち複数の項目に当てはまる方は、内分泌内科または内科を受診して甲状腺ホルモン値の検査を受けることが推奨されます。

セルフチェックはあくまで目安であり、診断は医師による検査結果に基づいて行われます。

バセドウ病は動悸・体重減少・手の震えとともに髪の毛が抜ける症状がある

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では代謝が過剰に亢進するため、動悸・体重減少・発汗過多・手指の振戦・下痢しやすいといった症状が脱毛とともに同時に出現します。

「一般的に甲状腺機能亢進症では、食べても食べてもやせてしまう、疲れやすい、よく眠れない、心臓がどきどきするなどの動悸、汗をかきやすい、下痢しやすい、(女性では)生理がなかなか来ないといった症状があります。また、手の指が小刻みに震える、毛が抜けやすいといった症状も見受けられます。」

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能亢進症・バセドウ病」

「(バセドウ病の症状)頻脈,発汗,体重減少…心悸亢進を訴え,頻脈がみられる…手指振戦がみられ,四肢に倦怠,脱力感あり…」

引用元:J-STAGE 橋本病・バセドウ病「診断と治療」

バセドウ病では急激な体重減少と脱毛が同時に起こるため、食欲は旺盛なのにやせてきたと感じる方は特に注意が必要です。

動悸や手の震えが抜け毛と同時に出ている場合は、バセドウ病の可能性を念頭に置いた受診が適切といえます。

バセドウ病はなぜ禿げるのか?ホルモン過剰による酸化ストレスが原因

バセドウ病で脱毛が起きる主な理由として、甲状腺ホルモンの過剰分泌によるヘアサイクルの乱れに加え、代謝の過亢進によって体内に酸化ストレスが増加し、毛包細胞にダメージを与える可能性が挙げられます。

代謝が過剰に高まると活性酸素の産生も増え、毛包内の細胞が正常なサイクルを維持できなくなることがあります。

さらに、バセドウ病は自己免疫疾患であるため、TSH受容体に対する自己抗体が甲状腺を刺激し続けることで持続的なホルモン過剰状態が生じ、それが長期間にわたって毛包に悪影響を及ぼし続けます。

皮膚や毛包にもTSH受容体が存在しているため、自己抗体の影響が毛包に直接及ぶ可能性も示唆されています。

「Human skin and HFs exhibit completely functional HPT axis proteins, particularly TSH and TRH receptors. TSH and TRH skin receptors govern epidermal physiology by inducing skin-specific gene expression.(ヒトの皮膚・毛包にもTSH受容体が存在し、ホルモン値変動が皮膚疾患と直結する)」

引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440

バセドウ病で禿げる背景には複合的なメカニズムが絡んでおり、単純なホルモン過剰だけでは説明しきれない側面があります。

治療による甲状腺機能の正常化が、これらの複合的な原因の根本を解消する方法です。

甲状腺の薄毛は更年期障害や産後脱毛と症状が似ているため見逃されやすい

甲状腺疾患による薄毛は、更年期障害や産後脱毛と症状が類似しているため、見過ごされやすいことが問題として指摘されています。

更年期障害でも倦怠感・体重変化・発汗・脱毛が起こり、産後脱毛では女性ホルモンの急激な変動によるびまん性脱毛が生じるため、甲状腺由来の脱毛との鑑別が難しいケースがあります。

実際、産後の女性は甲状腺疾患(産後甲状腺炎)の発症リスクが高まることも知られており、産後脱毛と甲状腺疾患による脱毛が同時期に重なって出現する可能性があります。

更年期世代の女性では、女性ホルモン低下の影響だと思っていた薄毛の背景に橋本病が隠れていたというケースも報告されています。

原因を特定せずに育毛剤や女性ホルモン補充療法だけを行っていても、甲状腺疾患が原因であれば根本的な改善は見込めません。

脱毛に加えて全身症状が伴っている場合は、更年期や産後の影響だけと決めつけずに甲状腺の検査も受けることが確実な診断への近道です。

甲状腺の薄毛は男性にも起こり得るが女性の発症率が圧倒的に高い

甲状腺疾患は女性に多い病気ではありますが、男性にも発症し、脱毛を含む全身症状をもたらすことがあります。

男性の場合、脱毛の原因としてAGAが疑われやすいため、甲状腺疾患による脱毛が見落とされやすい傾向があります。

J-STAGE掲載の杏林医会誌では「甲状腺機能異常症は円形脱毛症を併発しやすい疾患、および休止期脱毛の原因として記載」されており、男女ともに甲状腺疾患と脱毛の関連が認められています。

引用元:J-STAGE 杏林医会誌 49巻2号

男性で頭部全体が均一に薄くなるびまん性脱毛が生じている場合は、AGAの特徴的なパターン(M字・O字型)とは異なるため、甲状腺疾患を含む内分泌疾患の可能性を除外する検査を受けることが合理的な判断です。

男女ともに甲状腺の異常が脱毛の背景に潜んでいる可能性があることを認識した上で、専門医への受診を検討するべきです。

甲状腺が原因の薄毛が疑われるときの検査・診断の流れを解説

甲状腺疾患が薄毛の原因として疑われる場合、血液検査による甲状腺ホルモン値の測定が診断の第一歩となります。

自覚症状や脱毛の特徴から甲状腺疾患を疑っても、検査なしには確定診断ができないため、早期の受診が求められます。

健康診断の一般的な血液検査には甲状腺の項目が含まれていないため、自分から専門医に相談して専用の検査を依頼する必要があります。

診断には血液検査だけでなく、超音波検査や問診も組み合わせて総合的に評価が行われます。

薄毛を主訴に受診する場合でも、皮膚科・内科・内分泌内科のいずれでも甲状腺疾患の評価を依頼できる場合があります。

甲状腺の異常が疑われる場合はまず血液検査でTSHとホルモン値を確認する

甲状腺疾患の診断において最も重要な検査は血液検査であり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)・遊離甲状腺ホルモン(fT3・fT4)の値を測定することで機能異常の有無を判断します。

「血液検査によって甲状腺ホルモン(fT3、fT4)および下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。甲状腺ホルモン(fT3、fT4)値が正常よりも低ければ甲状腺機能低下症と診断されます。」

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能低下症」

「診断は血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4)を測定します。TSHだけが高くFT4が正常で症状がなければ潜在性甲状腺機能低下症です。TSHが高くFT4がかなり低下していると甲状腺機能低下症と診断されます。」

引用元:JCHO大阪病院コラム(PDF)

TSHは甲状腺ホルモンの過不足に非常に敏感に反応するため、スクリーニング検査として最も有用な指標とされています。

血液検査は簡便で身体への負担も少なく、1回の採血で複数の指標を確認できることから、甲状腺疾患の診断における最初のステップとして広く活用されています。

血液検査の主な項目はTSH・fT3・fT4と甲状腺自己抗体

甲状腺疾患が疑われる場合の血液検査では、TSH・fT3・fT4に加えて、自己免疫性甲状腺疾患の診断に必要な甲状腺自己抗体の測定も重要です。

甲状腺機能低下症の場合はTSHが高値・fT4が低値となり、バセドウ病の場合はTSHが低値・fT3・fT4が高値となる傾向があります。

「診断:甲状腺自己抗体(TGAb,TPOAb)が陽性になる…血中甲状腺ホルモンは低値を示す…TSHが高値となる」

引用元:J-STAGE 橋本病・バセドウ病「診断と治療」

以下に血液検査の主な測定項目と意義を整理しました。

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン):甲状腺機能の変動に最も鋭敏に反応するスクリーニング指標
  • fT4(遊離サイロキシン):甲状腺機能低下・亢進の程度を評価する主要ホルモン
  • fT3(遊離トリヨードサイロニン):組織での代謝活性化に最も関与する活性型ホルモン
  • 抗TPO抗体(TPOAb):橋本病やバセドウ病での自己免疫反応を確認する抗体検査
  • 抗TG抗体(TGAb):橋本病の自己免疫性炎症を評価するための抗体検査

これらの項目を組み合わせることで、機能異常の有無・種類・自己免疫的背景の有無を総合的に評価できます。

健康診断では甲状腺の項目が含まれないため専門医の受診が必要

一般的な職場健康診断や人間ドックの標準メニューには甲状腺ホルモン(TSH・fT3・fT4)の測定が含まれていないため、健康診断で異常なしとされていても甲状腺疾患が見落とされている可能性があります。

甲状腺疾患は自覚症状が軽微な段階から脱毛が始まるケースがあるため、髪の変化が気になる段階で自ら専門医に相談して検査を依頼することが重要です。

甲状腺疾患の診療は内分泌内科が専門ですが、かかりつけの内科・婦人科・皮膚科でも甲状腺の血液検査を依頼できる場合があります。

脱毛を主訴にするのではなく「甲状腺の検査を受けたい」と明確に伝えることで、必要な検査項目をオーダーしてもらいやすくなります。

健康診断の結果が正常でも脱毛や全身症状に不安を感じる方は、専門医への受診を積極的に検討することが賢明です。

内科・内分泌内科・皮膚科での問診と超音波検査で甲状腺の状態を診断する

血液検査に加えて、超音波検査(エコー検査)は甲状腺の形態・大きさ・内部の状態を視覚的に確認するために実施されます。

橋本病では甲状腺実質の不均一な変化が確認され、バセドウ病では甲状腺の腫大と血流増加が特徴的な所見として現れます。

問診では脱毛の始まった時期・経過・全身症状の有無・家族歴などを聴取し、血液検査・超音波検査と組み合わせて総合的な診断が行われます。

問診では日常生活での変化(疲れやすさ・体重変動・体温調節の異常など)も重要な情報となるため、受診前に症状を整理しておくことが診察をスムーズに進める上で役立ちます。

甲状腺疾患の確定診断には内分泌内科または甲状腺専門医への受診が最も確実であり、スクリーニング後に専門医を紹介してもらうルートも活用できます。

甲状腺が原因の薄毛に対する治療法と日常のヘアケア方法

甲状腺が原因の薄毛に対する治療の基本は、甲状腺疾患そのものを治療することでホルモン値を正常化することです。

疾患の種類(低下症か亢進症か)によって使用する薬剤が異なり、それぞれに適した治療アプローチが確立されています。

ホルモン値が正常化した後も、頭皮環境を整えるヘアケアや生活習慣の改善を並行して行うことで、毛包の回復をより効果的に支援できます。

クリニックでの発毛治療を甲状腺治療と並行して検討することも選択肢の一つとなります。

治療法の選択は個々の病状や症状の重さによって異なるため、必ず主治医と相談して適切な方針を決めることが最善です。

甲状腺機能低下症の薄毛治療はレボチロキシンによるホルモン補充が基本

甲状腺機能低下症の治療の基本は、不足している甲状腺ホルモンを補充するためにレボチロキシン(商品名:チラーヂンなど)を内服することです。

「甲状腺ホルモンの薬をお飲みいただきます。はじめは少ない量から飲み始め、甲状腺ホルモン値の正常化を目標に徐々に増やしていきます。その後は維持量を生涯続けるケースが多いです。」

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能低下症」

「甲状腺機能低下症の治療は合成甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン)の内服です。この薬は副作用もほとんどない安定した薬で、血中半減期が7日ほどあり、1日1回の内服で十分です。」

引用元:JCHO大阪病院コラム(PDF)

レボチロキシンによるホルモン補充でTSH値が正常範囲に安定すると、毛包内の代謝が回復し、脱毛の進行が止まって新しい毛が生えやすい状態になります。

治療はホルモン値を定期的に確認しながら用量調整を行うため、医師の指示に従った服薬管理が回復を左右する重要な鍵となります。

バセドウ病の抜け毛治療は抗甲状腺薬でホルモン分泌を正常化する方法が中心

バセドウ病による脱毛の治療は、過剰に産生されている甲状腺ホルモンを抑制するための抗甲状腺薬(メルカゾール・チウラジールなど)の内服が中心となります。

「抗甲状腺薬にはメルカゾールとチウラジールの2種類があり、通常はメルカゾールを1日3錠から飲み始め、甲状腺ホルモンの値を見ながら、徐々に減らしていきます。1日1錠あるいは1日おきで1錠というところまで減らし、そのまま1〜2年近く維持量として内服を続けます。」

引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「甲状腺機能亢進症・バセドウ病」

「抗甲状腺薬にはメチルメルカプトイミダゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)がある。いずれも甲状腺内でのヨード有機化を阻害し,甲状腺ホルモン生合成を抑制する」

引用元:J-STAGE 橋本病・バセドウ病「診断と治療」

抗甲状腺薬に加えて、甲状腺の手術(甲状腺部分切除)や放射性ヨード治療が選択されるケースもあり、治療方針は病態の重さや年齢・妊娠の有無などを考慮して主治医と検討します。

ホルモン値が安定化するに従い、脱毛は徐々に落ち着いていく可能性があります。

甲状腺治療と並行してクリニックの発毛治療や頭皮ケアを受ける選択肢もある

甲状腺疾患の治療を行いながら、脱毛専門クリニックや皮膚科で発毛治療や頭皮ケアを並行して受けることも選択肢として存在します。

甲状腺機能低下症のホルモン補充治療とAGA治療薬はそれぞれ作用機序が異なるため、適切な医師の管理のもとで併用が可能なケースがあります。

発毛クリニックとの比較の際には、甲状腺疾患の治療実績・スタッフの対応・頭皮診断の精度・費用感などを確認することが重要です。

以下に、甲状腺性脱毛への対応を標榜するクリニックタイプを比較しました。

比較項目 内分泌内科・甲状腺専門クリニック 薄毛・AGA専門クリニック 皮膚科(脱毛対応)
甲状腺疾患の治療 ◎ 専門的に対応可能 △ 甲状腺治療は不可 △ スクリーニングのみ可
血液検査・ホルモン値管理 ◎ TSH・fT3・fT4の管理が中心 × 対応外の場合が多い △ 基本検査のみの場合あり
発毛・育毛治療 △ 脱毛改善は甲状腺治療が中心 ◎ ミノキシジル等の専門治療 ○ 外用薬・内服薬の処方あり
頭皮診断(ダーモスコピー等) △ 限定的 ◎ 専門機器による精密診断 ○ 対応している場合あり
並行受診の可否 ◎ 他科との連携が推奨される ○ 甲状腺治療との併用を相談 ○ 主治医の指示に従う
費用の目安(初診) 保険適用あり(数千円〜) 自由診療(5,000円〜) 保険適用あり(数百円〜)

甲状腺疾患が確定している場合は内分泌内科での治療を優先し、ホルモン値が安定してからAGA・薄毛専門クリニックへの並行受診を検討することが現実的な対応です。

一方でホルモン治療だけでは改善が乏しい場合は、発毛専門クリニックでの頭皮評価や発毛促進治療を追加することで相乗効果が期待できる場合があります。

食事・頭皮マッサージ・ストレス管理など日常生活で改善できるヘアケアの方法

甲状腺治療と並行して、日常生活でのヘアケアや生活習慣の改善を行うことで、毛包の回復環境を整えることができます。

食事では、毛髪の材料となるタンパク質・亜鉛・鉄・ヨウ素(ただし過剰摂取は禁物)・ビタミンB群をバランスよく摂取することが重要です。

頭皮マッサージは血行を促進し、毛乳頭への栄養供給を改善する効果が期待されますが、炎症のある頭皮への強い刺激は逆効果になる場合があるため、優しく行うことが適切です。

ストレス管理については、自己免疫性甲状腺疾患の悪化要因となるため、十分な睡眠・適度な運動・リラクゼーション法の活用が有効な手段です。

シャンプーは低刺激のものを選び、熱いお湯での洗髪・ドライヤーの過剰使用・タオルでの強い摩擦を避けることも頭皮環境の維持に貢献します。

日常のヘアケアはあくまで補助的な手段であり、甲状腺疾患そのものの治療が脱毛改善の根幹となることを理解した上で取り組むことが重要です。

甲状腺の異常と髪の抜け方に関するよくある質問

甲状腺の異常と髪の抜け方については、多くの方が共通した疑問や不安を抱えています。

治療で本当に改善するのか・どのくらいの期間がかかるのか・他の医療的な処置への影響はあるのかなど、実生活に直結した疑問がよく寄せられます。

ここでは、特に検索頻度の高い疑問に対して、医学的根拠に基づきながらわかりやすく回答します。

疑問の解消が適切な行動につながり、早期受診や継続的な治療への動機となることが期待されます。

甲状腺の抜け毛は改善できますか?治療すれば多くの場合は回復が見込める

甲状腺の抜け毛は、根本原因である甲状腺ホルモンの異常を適切に治療することで、多くの場合において改善が期待できます。

ただし、回復には個人差があり、治療を開始してからすぐに効果が出るわけではありません。

「hair shedding may occur months before the manifestation of other symptoms, and replacement medication often halts hair loss, except in cases of long-term atrophic hair follicles associated with hypothyroidism.(補充療法薬は脱毛を止めることが多いが、長期萎縮毛包の場合は例外となる)」(引用元:Impact of Thyroid Dysfunction on Hair Disorders – PubMed PMC10492440)

一般的にホルモン値が安定化してから毛髪の改善を実感するまでには3か月〜半年、場合によっては1年程度かかる目安があります。

長期間にわたって治療をせず甲状腺疾患が進行していた場合は、毛包の萎縮が進んでいる可能性があるため回復が困難なケースも存在します。

抜け毛の改善を目指すなら、できる限り早期に専門医を受診して甲状腺機能の評価を受けることが、回復の可能性を高める上で最も重要な行動です。

甲状腺で脱毛サロンの施術ができない理由はホルモン異常による肌トラブルのリスク

甲状腺疾患を持つ方が脱毛サロン(光脱毛・レーザー脱毛など)の施術を断られるケースがあります。

その主な理由は、甲状腺ホルモンの異常によって皮膚が乾燥・過敏化・薄化していることが多く、光やレーザーの照射によって通常より皮膚ダメージが生じるリスクがある点です。

甲状腺機能低下症では皮膚の修復能力が低下している可能性があり、照射後の炎症回復が遅れるケースも考えられます。

バセドウ病では皮膚の代謝が過亢進しており、熱への反応が過敏になっている可能性もあります。

甲状腺疾患の治療が進みホルモン値が安定した後に改めてサロンに相談し、主治医の許可を得た上で施術を検討することが安全への配慮として適切です。

施術の可否は使用する機器・施術方法・皮膚の状態によって異なるため、施術前に担当医師とサロン双方への確認が不可欠といえます。

甲状腺機能が正常な橋本病でも抜け毛が起きるのは自己免疫が関係している

橋本病の患者でTSH・fT3・fT4がいずれも正常範囲内であるにもかかわらず、脱毛が生じているケースが報告されています。

これは甲状腺ホルモン値の異常による脱毛ではなく、自己免疫反応そのものが毛包に影響している可能性を示しています。

「47例中14例(29.8%)でTPOAbは陽性で,このうち甲状腺機能低下症例はなかった…このようなTPOAb陽性脱毛症患者では内分泌異常でなく,自己免疫異常が病因として考えられる」(引用元:J-STAGE 日本皮膚科学会誌 110巻7号「円形脱毛症における抗TPO抗体」

「more than 42.7% of patients with alopecia areata express thyroid autoantibodies, suggesting that anti-thyroid and anti-hair follicle autoimmunity share a similar aetiology.(円形脱毛症患者の42.7%以上が甲状腺自己抗体を持ち、甲状腺と毛包への自己免疫は共通の病因を持つことが示唆される)」(引用元:An Update on Alopecia and its Association With Thyroid Autoimmune Disease – PMC10769472)

慶應義塾大学病院KOMPASも「円形脱毛症の患者の中には、甲状腺の病気や膠原病といった他の自己免疫による病気をお持ちの方がいらっしゃいます」と記載しています。(引用元:慶應義塾大学病院 KOMPAS「脱毛症」

甲状腺機能が正常でも橋本病と診断されている方で脱毛が続いている場合は、自己免疫の観点からのアプローチが必要なケースがあるため、内分泌内科と皮膚科の両科での評価が有効です。

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