「血便が出たけど、これは痔？それとも病気？」
「ストレスが原因で血便が出ることはあるの？」
上記のような不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
血便は痔による一時的な出血から、大腸がんや潰瘍性大腸炎といった深刻な病気のサインまで、さまざまな原因が考えられます。
医学的に「心配のいらない血便」というものは存在せず、たとえ少量でも消化管のどこかで出血が起きている証拠です。
便の色や状態によって出血部位をある程度推測でき、鮮やかな赤色なら痔や大腸の病気、黒っぽい便なら胃や十二指腸からの出血が疑われます。
今回は、「血便が出る原因」や「考えられる病気」「検査方法」について詳しく解説していきます。
血便が気になっている方は、自己判断せず早めに消化器内科を受診してください。
血便が出るのはストレス？
過度なストレスだけで血便が出るわけではありませんが、ストレスによって腸の病気や生活習慣の乱れが生じ、それが結果的に出血につながることがあります。
ストレスが続くと、自律神経が乱れて腸の働きが不調になります。
上記により、過敏性腸症候群（IBS）自体は出血を伴わないことが多いですが、便秘や排便障害を繰り返すことで肛門が刺激され、痔による出血を引き起こすことがあります。
また、強いストレスや疲労、不規則な生活は胃潰瘍や虚血性大腸炎などの消化器疾患を悪化させ、そこから出血することもあります。
このように、ストレスそのものが血便の直接原因ではありませんが、ストレスによる腸トラブルや生活の乱れが引き金になる場合があります。
血便と下血の違いは？
血便は主に大腸・肛門などの下部消化管の出血で、便が赤く見えることが特徴です。
下血は胃や十二指腸など上部消化管の出血で、便が黒っぽくなるのが特徴です。
便の色が異なるのは、血液が腸を通る時間や胃酸の影響で変色するためです。
上部消化管で出血すると、血液が胃酸により酸化して黒色になります。
一方、下部で出血した場合は、体外に排出されるまでの時間が短く、血液が酸化しないため鮮やかな赤色になります。
血便と下血は出血の場所や色で違いがあり、いずれも消化管の病気が関係している可能性があります。
どちらの症状も続く場合は、早めに消化器内科を受診することが大切です。
血便が出る原因
血便の原因は「痔」から「大腸がん」までさまざまで、見た目の色や状態である程度の目安がわかります。
血便が出る主な原因
| 便の状態 | 主な原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鮮血便（赤い血） | 痔核（いぼ痔） 裂肛 直腸がん | 肛門や直腸付近からの出血で、排便後に血が付着する |
| 暗赤色便（黒っぽい赤） | 大腸憩室出血 虚血性腸炎 感染性腸炎 | 大腸内部からの出血で、腹痛や下痢を伴うことがある |
| 黒色便（タール状） | 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃がん | 上部消化管で出血した血液が酸化して黒くなる |
| 粘血便（粘液と血） | 潰瘍性大腸炎 クローン病 | 慢性的な腸の炎症で粘液と血が混じる |
最も多いのは「痔」による出血で、排便時のいきみや便秘が原因となります。
便器が真っ赤になるほどでなくても、放置は避けたい症状です。また、中高年で血便が出た場合、「大腸憩室出血」や「虚血性腸炎」のように、血管や腸の炎症が関係することもあります。
黒色の便が見られるときは、胃や十二指腸の潰瘍など、上部消化管に原因があることが多くなります。
血便が出た際に考えられる病気
血便が出た際に考えられる病気は以下の通りです。
- 痔（いぼ痔・切れ痔）
- 大腸ポリープ・大腸がん
- 潰瘍性大腸炎・クローン病
- 虚血性腸炎
- 大腸憩室出血
- 感染性腸炎
血便は痔による一時的なものから、大腸がんや炎症性腸疾患といった深刻な病気のサインまで、さまざまな原因が考えられます。
出血の色や量、伴う症状によって原因を推測することが可能です。
それでは上記の病気について解説していきます。
痔（いぼ痔・切れ痔）
鮮やかな血便はいぼ痔（内痔核・外痔核）や切れ痔（裂肛）が原因であることが多いです。
いぼ痔は、排便時のいきみや便秘などで肛門周囲の血管がうっ血して膨らむことで起こります。
一方、切れ痔は硬い便が肛門を通過する際に皮膚が裂けてしまうことで発生します。
具体例として、便秘が続いて硬い便を出したあとに鮮やかな血が付いていた場合、それは切れ痔のサインかもしれません。
また、排便のたびに血がポタポタ落ちるようなら、いぼ痔の可能性が高いです。
大腸ポリープ・大腸がん
血便の原因として代表的なのが大腸ポリープと大腸がんです。
| 疾患名 | 主な症状 | 出血の特徴 |
|---|---|---|
| 大腸ポリープ | 無症状のことが多いが、出血や便潜血陽性で見つかる | 便が擦れてポリープ表面が傷つき、少量の血便となる |
| 大腸がん | 血便、便通異常、腹痛、貧血など | がん部位により赤〜赤黒い血便が出る |
例えば、便に赤い血が混ざる、あるいは便が細くなったときには、大腸がんやポリープの出血が疑われます。
特に、鮮やかな赤い血が便の表面につく場合は、直腸やS状結腸の出血が考えられます。
暗い血や赤黒い血が混ざっている場合は、より上部の大腸からの出血の可能性があります。
血便は一時的な痔ではなく、大腸ポリープや大腸がんのサインであることもあります。
少量の出血でも自己判断せず、早めに内視鏡検査を受けることをおすすめします。
潰瘍性大腸炎・クローン病
血便が続く場合、潰瘍性大腸炎（UC）やクローン病といった「炎症性腸疾患（IBD）」を考慮することが重要です。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じ、これにより血便・粘血便・下痢・腹痛などが現れます。
特に、直腸から連続して炎症が広がるのが特徴で、軽症では紙に付く程度の血便、重症では真っ赤な血液が出ることもあります。
また、1日に10～20回以上の下痢が見られることもあります。
クローン病は口から肛門までの広範囲に炎症が起こる病気で、主症状は腹痛・慢性的な下痢・体重減少です。
潰瘍性大腸炎と異なり血便は比較的少なく、全体の約3割程度にしか見られませんが、肛門周囲膿瘍や痔瘻といった肛門病変が伴うことがあります。
こうした症状が数日〜数週間続く場合は、放置せず早めに消化器内科を受診することが大切です。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は腸の血流が一時的に悪くなって炎症を起こす病気で、放置すると悪化する可能性があるため早めの受診が大切です。
腸に十分な血液が届かない状態が続くと、粘膜がダメージを受け、潰瘍や出血が起こりやすくなります。
特に便秘や脱水、動脈硬化、ストレスなどが原因で発症するケースが多いです。
例えば、左下腹部の急な痛みのあとに下痢や赤い血便が出た場合、それは虚血性腸炎の典型的なサインといえます。
便秘が続いていた人や40代〜60代の女性に多く、排便のあとに痛みが少し楽になることも特徴です。
一方で、多くは数日で自然に軽快する軽症型が多いのですが、悪化すると腸の壊死や腸閉塞を引き起こす危険もあります。
血便を見たときは、自己判断せずに消化器内科を受診して原因を特定することが重要です。
大腸憩室出血
大腸憩室出血は、痛みのない大量の血便を突然起こす病気です。
大腸の壁にできた小さな袋（憩室）の血管が破れて出血することで起こり、短時間で多くの出血を伴うことがあるからです。
特に高齢者や血液をサラサラにする薬を服用している人では出血リスクが高く、注意が必要です。
具体的には、下表のような特徴がみられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な症状 | 突然の鮮やかな血便、腹痛を伴わない |
| 出血の特徴 | 便器の水が赤く染まるほどの出血（大量のこともある） |
| 原因 | 憩室内の血管が破れる、高齢・便秘・抗血栓薬使用など |
| 治療 | 安静・点滴・内視鏡的止血（クリップ法・バンド結紮術） |
| 再発率 | 約30～40％が再出血する可能性あり |
例えば、強い痛みがなく突然血便が出た場合、痔ではなく憩室出血を疑います。
多くは自然に止まりますが、再出血の危険があるため、必ず医療機関で検査を受けることが大切です。
感染性腸炎
突然の血便とともに腹痛や発熱、下痢がある場合は、感染性腸炎の可能性が高いです。
感染性腸炎は、O-157（腸管出血性大腸菌）やサルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌が腸に感染し、粘膜に炎症や出血を起こすことで発症します。
原因となる菌の種類により症状の程度は異なりますが、多くの場合、強い腹痛・発熱・水様性下痢・血便が見られます。
例えば、焼き肉や生野菜を食べた数日後に激しい腹痛と血便が出た場合、O-157などによる腸管出血性大腸炎の可能性があります。
この場合、放置すると腎臓障害（溶血性尿毒症症候群）などの重大な合併症を起こす危険があります。
したがって、血便と高熱・下痢・腹痛が同時にある場合には、感染性腸炎を疑って速やかに受診するようにしてください。
医学的に「心配のいらない血便・下血」というものは存在しない
医学的に「心配のいらない血便・下血」というものは存在しません。
血便や下血は消化管のどこかで出血が起こっている状態を示しており、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化管から出血を引き起こす病気を発症している可能性が高いためです。
消化管で何らかの異常があり出血をきたしているわけですから、検査や治療が必要になります。
原因は胃がんや大腸がんのように命にかかわる疾患ばかりではありませんが、何らかの疾患の可能性がある以上は「心配がない」とは言い切れません。
特に大腸がんなどの重大な病気が隠れている可能性もあるため、たとえ痔があっても自己判断せず、必ず消化器内科を受診することが重要です。
血便・下血がある時の検査方法
血便・下血があった場合は、出血箇所と原因を特定するために複数の検査を組み合わせて実施します。
基本となるのは内視鏡検査で、胃カメラや大腸カメラによって粘膜を直接観察することで、炎症や潰瘍、がん・ポリープなどの病変を正確に診断できます。
| 検査の種類 | 検査内容 | わかること |
|---|---|---|
| 血液検査 | 採血による検査 | 貧血の有無、炎症の程度、出血量の推定 |
| 直腸診 | 指で肛門・直腸を触診 | 痔核や腫瘍の有無、便の色調 |
| 胃カメラ検査 | 上部消化管の観察 | 食道・胃・十二指腸の出血箇所と原因 |
| 大腸カメラ検査 | 下部消化管の観察 | 大腸全体の粘膜状態、ポリープやがんの有無 |
| 腹部エコー検査 | 超音波による画像診断 | 腸管のむくみや炎症の状態 |
血便・下血の検査には、問診や視診から始まり、出血部位の特定に向けて段階的に進められます。
検査前には血圧や脈拍、体温などの全身状態も確認されるため、安心して検査を受けることができます。
血液検査では白血球数やCRPなどの炎症マーカーを確認し、尿素窒素（BUN）とクレアチニン（Cre）の比率が高い場合は消化管出血の可能性が高まるため内視鏡検査が推奨されます。
直腸診は診察室で簡単に受けられる検査で、肛門に指を入れて痔や直腸の状態を調べます。
血便と下血に関するよくある質問
最後に、血便と下血にまつわるよくある質問に回答します。
- 血便は何日くらい続いたら危険と判断すべきですか？
- 薬の影響で血便が出ることはありますか？
- 血便や下血を放置するとどんなリスクがありますか？
血便は何日くらい続いたら危険と判断すべきですか？
血便が続いたら、一度でも出た時点で受診を検討すべきですが、特に3日以上続く場合は危険と判断し、速やかに医療機関を受診する必要があります。
また、血便の量や色に変化がある場合も危険信号といえます。
大量の血便が出た際は緊急性が高く、直ちに医療機関を受診する必要があります。
薬の影響で血便が出ることはありますか？
薬の副作用によって血便が出ることがあります。
特に抗生物質や痛み止め、血液をサラサラにする薬などが原因となりやすく、これらを服用中に血便が現れた場合は早めに医師に相談することが大切です。
薬の副作用で血便が出ることは決して珍しくなく、特に痛み止めや抗生物質、血液サラサラの薬を服用している方は注意が必要です。
服用中に血便が見られた場合は、自己判断で薬を中止せず、必ずかかりつけの医師に相談しましょう。
血便や下血を放置するとどんなリスクがありますか？
血便や下血を放置すると、命に関わる重症化や病気の進行という深刻なリスクがあります。
なぜなら、少量の出血でも消化管内に多量の血液が溜まっていることがあり、持続的な出血によって貧血が進行しショック状態に陥る可能性があるからです。
また、「痔だろう」と自己判断している間に大腸がんが進行していたというケースも少なくありません。
したがって、血便や下血を「少量だから大丈夫」「そのうち治るだろう」と考えて放置することは危険であり、早めに消化器内科を受診して内視鏡検査を受けることが重要です。
まとめ
血便は、ストレスそのものが直接の原因ではないものの、腸の不調や生活リズムの乱れを引き起こし、出血につながることがあります。
痔や大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎など、軽度から重度まで多様な疾患が関係しており、「心配のいらない血便」は存在しません。
出血の色や量、伴う症状から原因を推測し、適切な検査と診断を受けることが重要です。
血便や下血が見られた際は、放置せずに早めに消化器内科を受診し、必要に応じて内視鏡検査を受けてください。
