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過敏性腸症候群(IBS)の治し方は?原因と治療方法を解説

過敏性腸症候群(IBS)の治し方は?原因と治療方法を解説

「過敏性腸症候群の治し方は?」

「過敏性腸症候群の治し方は市販薬でも大丈夫?」

過敏性腸症候群(IBS)は、検査をしても異常が見つからないのに、お腹の不調が慢性的に続く病気です。

そのため「完全に治す」ことよりも、症状を上手にコントロールしていくことが治療の目標になります。

具体的には、医師の診察のもとで行う薬物療法を土台に、食生活の見直しやストレス対策、睡眠・運動といったセルフケアを組み合わせていくのが基本的な進め方だといえるでしょう。

一方で、血便や体重減少などのサインがある場合は、別の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

今回は、「過敏性腸症候群になる原因と4つのタイプ」や「病院で行う検査・治療方法」「自分でできるセルフケアのコツ」などについて詳しく解説していきます。

お腹の不調に長く悩まされている方は、ぜひ参考にしてください。

ありずみ    消化器内科院長 有住忠晃

ありずみ消化器内科では、繰り返す腹痛や下痢・便秘といったお腹の不調について、大腸カメラで他の病気がないかを確認したうえで、過敏性腸症候群の診断・治療を行っております。

局所麻酔・鎮静剤を用いて、苦痛の少ない検査に対応

「検査がつらそう」と受診をためらっている方も、
ありずみ消化器内科にご相談ください!

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診療時間月火水木金土日
9:00~12:00○○○–○○★
16:00~18:00○○○–○–
★:月に1度内視鏡検査・CT検査をしています
※休診日:木曜日・土曜午後・日曜・祝日

執筆者 有住 忠晃

近畿大学医学部を卒業後、近畿大学医学部消化器内科に入局し消化器内科を専門領域として最先端の診療・研究を実施。
その後、医療法人太雅会辻賢太郎クリニックにて消化器疾患や生活習慣病をはじめとした一般内科の診療・内視鏡検査に従事。
現ありずみ消化器内科院長。

目次

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)とは、大腸や小腸に潰瘍やがんなどの目に見える異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。

検査では異常が見つからないため、原因が「気のせい」だと誤解されやすいものの、実際には腸の機能に問題が生じている立派な疾患だといえます。

背景には、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う「脳腸相関」という仕組みの乱れがあると考えられています。

項目特徴
有病率日本人の約10〜15%
好発年齢20〜40歳代に多い
性別の傾向男性より女性に多い
生命への影響良性疾患だが生活の質(QOL)を下げる
主なきっかけストレス・自律神経の乱れなど

有病率は約10〜15%と見積もられ、加齢とともに低下する傾向があります。

生命に関わる病気ではないものの、外出やトイレへの不安から生活の質を下げてしまうため、適切な治療が必要な消化管の疾患です。

参考:過敏性腸症候群(IBS)|ガイドライン一覧|日本消化器病学会ガイドライン

過敏性腸症候群で現れやすい症状

過敏性腸症候群では、腹痛と便通の異常を中心に、さまざまなお腹の不快感が現れます。

腸の蠕動運動(便を押し出す動き)が過剰になったり弱くなったりすることで、下痢や便秘、腹部の張りといった症状が起こるためです。

過敏性腸症候群で現れやすい症状
  • 排便すると軽くなる、繰り返す腹痛
  • 下痢と便秘、またはその両方(交互に起こることもある)
  • お腹の張りやガスがたまる感じ、頻繁なおなら
  • 残便感やスッキリしない便通

なお、おならが頻繁に出て膨満感が強いタイプは「ガス型」と呼ばれることもあります。

これらの症状は、朝の通勤・通学時や食後、ストレスがかかる場面で悪化しやすい傾向があります。

一方で、睡眠中には症状が出にくいという特徴もあります。

腹痛と便通異常が慢性的に続き、日常生活に影響が出ている場合は、過敏性腸症候群を疑って消化器内科を受診することをおすすめします。

ありずみ消化器内科では、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を保険診療で行っています。

  • 腹痛や下痢・便秘といったお腹の不調が慢性的に続いている
  • 過敏性腸症候群(IBS)かもしれないが、他の病気がないか確認したい
  • 血便や黒っぽい便が出た
  • 6か月以内に3kg以上の体重減少があった
  • 発熱や貧血、強いだるさを伴う便通異常がある
  • 50歳以降になって初めて便通異常が現れた
  • 局所麻酔・鎮静剤を使用した、苦痛の少ない検査を希望している

症状や検診結果をもとに医師が必要と判断した場合、保険が適用されます。

上記の症状などがある場合は、お気軽にご相談ください。

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過敏性腸症候群の4つの種類

過敏性腸症候群の4つの種類

過敏性腸症候群(IBS)は、便の状態によって「下痢型」「便秘型」「混合型」「分類不能型」の4つに分類されます。

タイプ略称主な便の状態
下痢型IBS-D軟らかい便・水様便が多い
便秘型IBS-C硬い便・コロコロした便が多い
混合型IBS-M硬い便と軟らかい便が交互に出る
分類不能型IBS-Uどの型にも当てはまらない

それぞれ原因や症状の現れ方、なりやすい傾向が異なり、対処法も変わってきます。

ここでは、各タイプの特徴と具体的な症状について詳しくご紹介します。

下痢型(IBS-D)

下痢型(IBS-D)は、軟らかい便や水のような便が繰り返し起こるタイプです。

腸の動きが過剰になり、便が大腸を通過するスピードが速すぎて、水分が十分に吸収されないまま排出されてしまうことが原因と考えられます。

下痢型では、ブリストル便形状スケールのタイプ6・7といった軟らかい便が多くなります。

具体的には、通勤中や試験前など緊張する場面で急に強い便意に襲われ、1日に何度もトイレへ駆け込むといったケースがみられます。

急な下痢への不安(予期不安)から外出そのものが苦痛になり、生活に支障をきたすことも少なくありません。

男性に比較的多いタイプとされています。

腹痛を伴うことが多いため、腸の動きすぎを抑える治療が中心になります。

便秘型(IBS-C)

便秘型(IBS-C)は、硬くコロコロした便が出にくくなるタイプです。

腸の蠕動運動が弱まったり、腸がけいれんするように動いて便が停滞したりすることで、便通の回数が減ってしまうためです。

便秘型では、ブリストル便形状スケールのタイプ1・2にあたる硬い便が多くなります。

たとえば、強くいきまないと便が出ない、排便できてもウサギの糞のような硬い便で残便感が残る、といった状態が続きます。

腹痛や腹部の張りを伴い、排便すると少し楽になるのが特徴です。

女性に多くみられる傾向があります。

一般的な便秘とは異なり、腹痛を伴う点が診断のポイントになります。

混合型(IBS-M)

混合型(IBS-M)は、下痢と便秘を交互に繰り返すタイプです。

腸の水分調整機能が不安定になり、時期によって水分を吸収しすぎて硬い便になったり、逆に吸収が不十分で軟らかい便になったりするためです。

混合型では、硬い便と軟らかい便が同じくらいの頻度で現れます。

たとえば、数日間便秘が続いた後に急な下痢に見舞われる、といったパターンを繰り返します。

仕事の会議中や電車内で突発的な下痢に襲われる不安がある一方、数日後には便秘に悩むこともあり、生活の質への影響が大きいタイプです。

症状が一定しないため、便の経過を医師に伝えながら薬を調整していくことが大切になります。

分類不能型(IBS-U)

分類不能型(IBS-U)は、下痢型・便秘型・混合型のいずれの基準にも明確に当てはまらないタイプです。

腹痛や便通異常はあるものの、便の形状の偏りが基準を満たすほど強くないために、はっきりと分類できないケースが該当します。

分類不能型では、ブリストル便形状スケールのタイプ3〜5といった、比較的正常に近い便が主体となります。

たとえば、便の硬さはそれほど極端ではないものの、お腹の張りや不快感、腹痛が慢性的に続くといった状態です。

分類不能型だからといって症状が軽いわけではなく、他のタイプと同様につらさを感じている患者さんも少なくありません。

ありずみ消化器内科では、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)に対応しています。

  • 大腸カメラは痛いのではないかと不安
  • 以前の検査がつらく、次の受診をためらっている
  • 腹痛や下痢・便秘といったお腹の不調が慢性的に続いている
  • 血便や体重減少など、過敏性腸症候群とは違う病気が心配で一度検査を受けたい

患者さまの症状やご希望を確認しながら、局所麻酔・鎮静剤を用いた苦痛の少ない検査方法をご提案します。

大腸カメラに不安がある方も、お気軽にありずみ消化器内科へご相談ください。

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過敏性腸症候群になる原因

過敏性腸症候群になる原因

過敏性腸症候群は一つの原因だけで起こる病気ではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。

特にストレスや腸内環境の乱れ、食生活や生活習慣は症状に大きく関わる重要な要素です。

以下では、過敏性腸症候群の主な原因について、それぞれ詳しく解説します。

ストレスや自律神経の乱れ

過敏性腸症候群の最も大きな要因は、ストレスと、それに伴う自律神経の乱れです。

腸の動きは自律神経によってコントロールされており、ストレスを受けるとこのバランスが崩れて、腸が過剰に動いたりけいれんしたりするためです。

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自律神経の種類腸への働き乱れたときに起こること
交感神経(緊張時に優位)腸の動きを抑える腸がけいれんし便が停滞して便秘になる
副交感神経(リラックス時に優位)腸の動きを活発にする動きが過剰になり下痢を引き起こす

ストレスによってこのバランスが乱れると、腸の動きが盛んになりすぎて下痢を、逆に動かなくなって便秘を招きます。

たとえば、大事な発表や試験の前に急にお腹が痛くなる経験は、まさにこの脳腸相関による反応です。

ストレスが腸に影響するまでの流れ
  1. ストレスを感じると脳から指令が出る
  2. ストレスホルモンが分泌される
  3. 交感神経が優位になり腸の運動が乱れる
  4. 痛みを感じる閾値が下がり、腸が過敏になる

ストレスがかかると脳から指令が出てストレスホルモンが分泌され、腸の運動や知覚が過敏になります。

不安や緊張が腸を刺激し、その不快感がさらにストレスを増幅させるという悪循環に陥りやすい点にも注意が必要です。

腸内環境の悪化

腸内環境の悪化も、過敏性腸症候群を発症させる要因の一つと考えられています。

腸内には多くの細菌がすみついており、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、腸に微小な炎症が起こって腸が敏感になるためです。

腸内環境が乱れるきっかけ
  • 抗菌薬(抗生物質)の服用
  • 体調の変化や過度なストレス
  • 食物繊維の不足
  • 不規則な食事や偏った食生活
  • 細菌・ウイルスによる感染性腸炎

抗菌薬の服用や体調の変化などで悪玉菌が増え、腸内細菌のバランスが乱れると、それがきっかけで発症することがあります。

実際に、感染性腸炎が治った後に発症する「感染後IBS」も報告されています。

腸内環境を整えることは、症状の改善につながる大切なポイントだといえるでしょう。

食生活や生活習慣の影響

日々の食生活や生活習慣の乱れも、過敏性腸症候群の症状に大きく影響します。

特定の食べ物や飲み物が腸を刺激したり、睡眠不足や不規則な生活が腸の働きを乱したりするためです。

分類悪化させやすい要因腸への影響
食事内容脂質の多い食事

香辛料
腸を直接刺激して腹痛や下痢を招く
飲み物アルコール

コーヒー
腸の動きを乱し便通異常を起こす
食事のとり方夜遅い食事

不規則な時間
腸のリズムが乱れる
生活習慣過労

睡眠不足
自律神経が乱れ蠕動運動が変化する

炭水化物や脂質の多い食事、香辛料、アルコール、コーヒーは症状を悪化させやすいといわれています。

たとえば、夜遅くに脂っこい食事や大量のアルコールを摂取すると、翌朝に下痢や腹痛が起こりやすくなります。

過労や睡眠不足が続くと、自律神経が乱れて腸の蠕動運動が不規則になります。

規則正しい生活と、腸に負担をかけない食事を意識することが、症状を落ち着かせるポイントになります。

過敏性腸症候群(IBS)は完治する?

「この病気は一生治らないのではないか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

過敏性腸症候群は命に関わる病気ではなく、適切な治療とセルフケアで症状を十分にコントロールできる病気です。

ただし、その向き合い方には少しコツがあります。

ここでは「完治」という言葉との付き合い方について、大切な考え方をお伝えします。

過敏性腸症候群は「完治」よりも症状のコントロールを目指す病気

過敏性腸症候群は、「完全に治す」よりも「症状を上手にコントロールする」ことを目標にすると、気持ちが楽になります。

原因がストレスや体質、生活習慣など複数の要因にまたがっているため、風邪のように一度の治療で完全に消えるとは限らないからです。

IBSは軽症例が約75%を占め、多くの場合、生活指導や薬物療法を組み合わせた治療で改善が期待できます。

たとえば、薬で下痢や便秘を抑えつつ、ストレスとの付き合い方や食生活を見直すことで、症状が出ない期間を長く保てるようになります。

治療を受ければ回復が期待できるため、症状があるときは早めに受診することが大切です。

「ゼロか100か」で考えず、症状と上手につきあいながら日常生活を取り戻していく姿勢が、改善への近道になります。

大腸カメラに不安がある場合でも、症状の程度やご希望に合わせて局所麻酔・鎮静剤の使用など、苦痛の少ない検査方法を選ぶことが大切です。

ありずみ消化器内科では、繰り返す腹痛や下痢・便秘といったお腹の不調について、大腸カメラで他の病気がないかを確認したうえで、過敏性腸症候群の診断・治療を行っております。

局所麻酔・鎮静剤を用いた、苦痛の少ない検査にも対応しています。

お腹の不調が続く方や、大腸カメラへの不安がある方も、お気軽にご相談ください。

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過敏性腸症候群の検査方法

過敏性腸症候群の検査は、他の病気ではないことを確かめる「除外診断」が中心になります。

過敏性腸症候群そのものを直接見つける検査はなく、大腸がんや潰瘍性大腸炎など、似た症状を起こす病気を一つずつ除外したうえで診断するためです。

診断には、症状を中心とした国際的な「Rome(ローマ)Ⅳ診断基準」が広く用いられています。

行われる検査
  • 問診:症状の経過や、腹痛と排便の関係、生活への影響を詳しく確認する
  • 血液検査:貧血や炎症の有無を調べる
  • 便潜血検査:便に血が混じっていないかを確認する
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):大腸がんや炎症性腸疾患を除外する

発熱、血便、6か月以内に3kg以上の予期せぬ体重減少、50歳以上での発症などの「警告症状」がある場合は、大腸カメラなどの検査が特に重要になります。

これらの検査で異常がなく、診断基準を満たせば、過敏性腸症候群と診断されます。

大腸カメラ

過敏性腸症候群の治療方法

過敏性腸症候群の治療は、生活習慣の見直しを土台に、必要に応じて薬物療法を組み合わせて進めていきます。

原因が一つではないため、腸の状態を整える薬と、ストレスへの対処や食生活の改善を並行して行うことが効果的だからです。

薬を使わない治療としては、食事療法・心理療法・運動療法が用いられます。

症状が軽い場合はセルフケアが中心になりますが、生活に支障が出ている場合は、医師の診察のもとで薬による治療を受けることが改善への近道になります。

ここでは、専門的な治療の柱となる「薬物療法」について詳しく見ていきましょう。

医師の診察のもとで行う「薬物療法」

薬物療法は、症状のタイプや強さに合わせて、医師が薬を選び処方していく治療です。

過敏性腸症候群には多くの種類の薬があり、その人の症状に合った組み合わせを見つけることが改善につながるためです。

初めの処方がよく効く場合もあれば、通院を重ねながら、その方に合った薬の組み合わせを見つけていく場合もあります。

たとえば、まず腸内環境を整える整腸剤や、腸の働きを調整する薬から始め、効果を見ながら下痢や便秘に特化した薬を追加していきます。

薬で改善しにくい場合には、不安や緊張をやわらげる心理療法や漢方薬を併用することもあります。

自己判断で市販薬を続けるより、専門医に相談しながら薬を調整するほうが、安全かつ効率的に症状を抑えられます。

【症状別】下痢・便秘・腹痛を抑える代表的なお薬

過敏性腸症候群の薬は、下痢・便秘・腹痛といった症状のタイプごとに使い分けられます。

症状の出方によって腸に起きている問題が異なるため、それぞれに合った作用の薬を選ぶ必要があるからです。

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症状・タイプ代表的な薬(成分・商品名)主な働き
共通(便通の調整)ポリカルボフィルカルシウム
(コロネル・ポリフル)
腸内の水分を調整し便の状態を整える
下痢型ラモセトロン(イリボー)腸の過剰な動きを抑え下痢・腹痛を改善
便秘型リナクロチド(リンゼス)腸の分泌を促し排便を助ける
腹痛・張りブチルスコポラミンなど
(抗コリン薬)
腸のけいれんをやわらげ痛みを軽減
腸内環境ビオフェルミン・ミヤBMなど善玉菌を補い腸内バランスを整える

ラモセトロンはセロトニンの働きに拮抗して下痢を抑える薬で、便秘が優位な状態には用いません。

リナクロチドは食前に服用するなど、薬ごとに飲み方の注意点があるため、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。

過敏性腸症候群は自力で治せる?セルフケアで改善できるケース

過敏性腸症候群の症状が軽い場合は、セルフケアだけである程度改善できるケースもあります。

食生活の見直しやストレス管理、生活習慣の改善は、腸を過敏にしている要因そのものにアプローチできるためです。

実際に、生活習慣の改善だけで症状が大きく良くなる患者さんも少なくないと報告されています。

たとえば、睡眠不足やストレスが主な原因の場合、規則正しい生活を整えるだけで下痢や腹痛の頻度が減ることがあります。

ただし、セルフケアには限界があり、無理に自力で治そうとするとかえって悪化させてしまう場合もあります。

どこまで自分で対処してよいのか、どんなときに受診すべきなのかを、次で確認しておきましょう。

病院を受診すべき症状とセルフケアだけでは難しいケース

強い症状や「警告サイン」がある場合は、セルフケアで様子を見ずに、必ず医療機関を受診してください。

過敏性腸症候群とよく似た症状が、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの重い病気で起こることもあり、放置すると危険な場合があるためです。

次のような症状があるときは、自己判断を避けて早めに受診しましょう。

  • 血便や黒っぽい便が出る
  • 体重が急に減っている
  • 発熱や貧血、強いだるさを伴う
  • 夜間や睡眠中にも下痢で目が覚める
  • 50歳以降になって初めて便通異常が現れた

これらのサインがある場合は、IBSの薬で様子を見る前に、大腸カメラなどで別の病気がないかを確認することがあります。

また、症状が強くて生活に支障が出ている場合や、市販薬を使い続けても改善しない場合も、専門医への相談が必要です。

過敏性腸症候群のセルフケア方法

過敏性腸症候群のセルフケア方法

過敏性腸症候群は、日常生活の工夫によって症状の改善が期待できる場合があります。

食事や生活習慣、ストレスとの向き合い方を見直すことが、セルフケアの大切なポイントです。

ここでは、自宅で無理なく実践できる過敏性腸症候群のセルフケア方法を紹介します。

食生活を見直す

セルフケアの基本は、腸に負担をかけない食生活へ見直すことです。

食事の内容やとり方は胃腸に直接影響するため、刺激の強い食品を控えるだけでも症状が落ち着きやすくなるからです。

控えたいもの積極的にとりたいもの
アルコール・カフェイン発酵食品(納豆・味噌など)
香辛料などの刺激物オリゴ糖を含む食品
脂っこい食事水分(便秘型は特に意識)
冷たい飲み物・炭酸飲料適度な食物繊維

刺激物や冷たい飲み物は避け、発酵食品やオリゴ糖など腸内環境を整える食べ物をとるのが望ましいとされています。

また、暴飲暴食や夜遅い食事を控え、決まった時間に3食をよく噛んで食べるだけでも、腸のリズムが整いやすくなります。

自分にとって症状が出やすい食品をメモしておくと、避けるべき食べ物が見えてきます。

低FODMAP食を取り入れる

食事の工夫として近年注目されているのが、「低FODMAP食」という食事法です。

特定の糖質を一時的に減らすことで、お腹の張りや下痢を引き起こす腸への刺激を抑えられるためです。

過敏性腸症候群への有効性が報告されており、“薬を使わない治療”として勧めるクリニックも増えています。

ただし、やり方には正しい手順があり、自己流で極端に行うと栄養が偏る可能性もあります。

以下で、低FODMAP食の基本と実践のポイントを詳しく解説します。

FODMAPとは

FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい特定の糖質の総称です。

これらの糖質は腸内で水分を引き込んだりガスを発生させたりするため、敏感な腸では症状の引き金になりやすいからです。

FODMAPは「発酵性オリゴ糖・二糖類・単糖類およびポリオール」の頭文字を取った言葉です。

たとえば、吸収されなかったFODMAPが小腸で水分を引き込んで下痢を招き、大腸で発酵してガスを生み、腹部の膨満感を引き起こします。

重要なのは、FODMAP自体は「毒」ではなく、健康な腸ではむしろ善玉菌のエサとして働く成分だという点です。

過敏になっている腸への刺激量を一時的に調整する方法だと理解しておくとよいでしょう。

高FODMAP食品と低FODMAP食品の違い

FODMAPを多く含む「高FODMAP食品」と、少ない「低FODMAP食品」を知ることが大切です。

同じ食材グループでも、種類や製法によってFODMAPの量が大きく異なるためです。

分類高FODMAP食品(控えたい)低FODMAP食品(選びたい)
主食小麦

パン

パスタ

うどん
米

米粉

そば
野菜玉ねぎ

にんにく

アスパラガス
にんじん

なす

ほうれん草
果物りんご

すいか

もも
バナナ

いちご

みかん
乳製品牛乳

ヨーグルト
ラクトースフリー製品

豆乳(無調整)
その他はちみつ

大豆
カシューナッツ
卵

肉

魚

豆腐(木綿)

「米粉は低FODMAP、小麦粉は高FODMAP」と覚えておくと選びやすくなります。

すべてを避けるのではなく、自分の腸に合わない食材を見極めて調整することが大切です。

低FODMAP食を実践するときの注意点

低FODMAP食は、正しい3つのステップに沿って行うことが大切です。

高FODMAP食品をずっと避け続けると栄養バランスが崩れ、かえって腸の調子を乱してしまう可能性があるからです。

実践の流れ
  1. 制限期(2〜4週間):高FODMAP食品を控えて腸の反応をリセットする
  2. 再導入期:1種類ずつ食品を試し、どれが症状を起こすかを確認する
  3. 維持期(個別化期):問題のない食品は戻し、自分に合った食生活に調整する

これは単に高FODMAP食品を避ける食事法ではなく、自分に合わない食品を見つけるための方法です。

過敏性腸症候群の治療の第一選択ではなく、あくまで一つの手段であり、自己判断で極端な制限を行うのは避けるべきです。

難易度が高い食事法のため、できれば医師や管理栄養士の指導を受けながら取り組むようにしましょう。

ストレスを上手にコントロールする

ストレスと上手につきあうことは、過敏性腸症候群のセルフケアで欠かせません。

ストレスは自律神経を乱し、脳腸相関を通じて腸を過敏にする最大の要因の一つだからです。

たとえば、次のようなリラックス方法を日常に取り入れると効果が期待できます。

  • 腹式呼吸:鼻からゆっくり吸ってお腹を膨らませ、口から長く吐く
  • 筋弛緩法:体に力を入れてから一気に脱力し、緊張をほぐす
  • 趣味やぬるめの入浴など、自分なりの息抜きの時間を持つ

多忙な毎日でも、読書やゆっくりした入浴などで息抜きの時間を持ち、ストレスを軽くする生活を心がけることが予防につながります。

それでも不安や緊張が強い場合は、専門的な心理療法を受けることも選択肢になります。

「完璧にしなければ」と気負いすぎないことも、大切なストレス対策の一つです。

睡眠の質を高める

十分で質のよい睡眠をとることも、腸の調子を整えるうえで重要です。

睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、腸の働きに悪い影響を及ぼすためです。

過敏性腸症候群の患者さんには、規則正しい生活と十分な睡眠が推奨されています。

睡眠の質を高めるコツ
  • 毎日決まった時間に就寝・起床し、リズムを一定に保つ
  • 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • 夕方以降のカフェインやアルコールを避ける
  • 就寝前にぬるめの入浴で体をリラックスさせる

睡眠のリズムが整うと、朝の腸の動きも安定しやすくなり、通勤前の下痢や腹痛が軽減することもあります。

まずは「寝る時間と起きる時間を一定にする」ことから始めてみてください。

適度な運動を習慣化する

適度な運動を習慣にすることも、症状の改善に役立ちます。

体を動かすことは腸の蠕動運動を促し、ストレスの発散や自律神経の安定にもつながるからです。

薬を使わない治療では、食事療法や心理療法とならんで運動療法が用いられます。

無理なく続けられる運動
  • ウォーキング(1日20〜30分ほど)
  • 軽いストレッチやヨガ
  • 通勤時に一駅歩く、階段を使う

激しい運動である必要はなく、日常のなかで少し体を動かす機会を増やすだけでも十分です。

続けることで便通が整いやすくなり、気分転換にもなります。

自分のペースで、生活のなかに体を動かす習慣を取り入れていきましょう。

過敏性腸症候群の治し方に関するよくある質問

以下では、過敏性腸症候群の治し方について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

過敏性腸症候群のNGな食べ物は?

過敏性腸症候群では、腸を刺激しやすい食べ物を控えることが症状の改善につながります。

注意したい食べ物・飲み物
  • 脂っこい食事や香辛料などの刺激物
  • アルコールやカフェイン(コーヒーなど)
  • 冷たい飲み物や炭酸飲料
  • 玉ねぎ・にんにく・小麦製品などの高FODMAP食品

下痢型の方は、カフェイン、香辛料、高脂肪食、炭酸飲料に加え、ガスを増やしやすい豆類やいも類なども控えるとよいとされています。

ただし、すべての人に同じ食品が悪いわけではありません。

自分にとって症状が出やすい食べ物を見つけて、無理のない範囲で調整することが大切です。

過敏性腸症候群に市販薬は効く?

軽い症状であれば、市販薬でお腹の不調を一時的にやわらげられる場合があります。

種類代表的な市販薬主な用途
過敏性腸症候群薬セレキノンS診断歴のある方の再発症状の改善
下痢止めトメダインコーワ など急な下痢の緩和
便秘薬酸化マグネシウム便秘薬便をやわらかくして排便を促す
整腸剤乳酸菌配合の整腸薬腸内環境を整える

セレキノンSは、過去に医療機関で過敏性腸症候群と診断された方の再発症状に用いる薬で、15歳未満は服用できないなどの制限があります。

市販薬はあくまで一時的な対処であり、症状が続く場合や強い場合は、根本的な原因を調べるためにも受診が必要です。

過敏性腸症候群にビオフェルミンは効く?

ビオフェルミンなどの整腸剤は、乱れた腸内環境を整える補助として役立つことがあります。

生きた善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)を補うことで、腸内細菌のバランスを整える働きが期待できるためです。

ビオフェルミンは安全性が高く、副作用の心配がほとんどない整腸剤で、幅広い年代の方が使えます。

たとえば、便秘や下痢を繰り返す軽い便通異常には、こうした整腸剤が合うこともあります。

ただし、整腸剤だけで強い腹痛や便通異常を抑えきれない場合もあり、できれば医師の指導のもとで使うことが望ましいとされています。

中学生・高校生の過敏性腸症候群はどう治す?

中学生・高校生の過敏性腸症候群も、大人と同じく生活習慣の調整と薬物療法で治療していきます。

思春期は学校や友人関係、受験などのストレスがかかりやすく、脳腸相関を通じて腸が過敏になりやすい時期だからです。

子どもの場合、友人・学校・家庭でのトラブルなどの心理社会的な要因が複雑に関わって発症します。

たとえば、通学前に決まって腹痛や下痢が起こり、遅刻や欠席が増えてしまうといったケースがみられます。

これは決して怠けや仮病ではないため、まずは周囲が理解し、無理をさせないことが大切です。

治療では、腸の働きを整える薬や漢方薬に加え、起立性調節障害など他の要因がないかも含めて、小児科や消化器内科で相談することをおすすめします。

過敏性腸症候群と間違えやすい病気は?

過敏性腸症候群は、症状が似ている他の腸の病気と間違えやすいため注意が必要です。

下痢や便秘、腹痛といった症状は、より重い病気でも同じように現れることがあるためです。

過敏性腸症候群と間違えやすい病気
  • 大腸がん(便通異常や血便が過敏性腸症候群と紛らわしい)
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病(若い世代に多い腸の炎症)
  • 感染性腸炎や甲状腺の病気など

大腸がんの患者さんも、「下痢と便秘を繰り返す」といった過敏性腸症候群と見分けにくい症状を感じていることが少なくありません。

だからこそ、自己判断で過敏性腸症候群と決めつけず、検査でこれらの病気を除外することが欠かせません。

気になる症状が続くときは、早めに医療機関で正確な診断を受けましょう。

まとめ

過敏性腸症候群の治し方は、原因やタイプを正しく理解したうえで、医師による薬物療法と自分でできるセルフケアを組み合わせていくことが大切です。

今回紹介した食生活の見直しや低FODMAP食、ストレス対策、睡眠・運動の習慣化を無理のない範囲から取り入れ、症状をコントロールできる状態を目指していきましょう。

ただし、血便や体重減少といったサインがある場合は、大腸がんなど他の病気が隠れている可能性もあるため、自己判断は禁物です。

つらいお腹の症状は一人で抱え込みがちですが、適切な治療で改善が期待できる病気ですので、まずは消化器内科に相談することから始めてみてください。

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